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気息奄奄/気息奄々
きそくえんえん
作家
作品

夏目漱石

【現代日本の開化 ――明治四十四年八月和歌山において述――】

体力脳力共に吾らよりも 旺盛おうせいな西洋人が百年の歳月を費したものを、いかに先駆の困難を勘定かんじょうに入れないにしたところでわずかそのなかばに足らぬ歳月で明々地に通過しおわるとしたならば吾人はこの驚くべき知識の収穫を誇り得ると同時に、一敗またあたわざるの神経衰弱にかかって、 気息奄々きそくえんえんとして今や路傍に呻吟しんぎんしつつあるは必然の結果としてまさに起るべき現象でありましょう。

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坂口安吾

【FARCEに就て】

 一体、人々は、「空想」といふ文字を、「現実」に対立させて考へるのが間違ひの元である。私達人間は、人生五十年として、そのうちの五年分くらいは空想に費してゐるものだ。人間自身の存在が「現実」であるならば、現に其の人間によつて生み出される空想が、単に、形が無いからと言つて、なんで「現実」でないことがある。実物を掴まなければ承知出来ないと言ふのか。掴むことが出来ないから空想が空想として、これほども現実的であるといふのだ。大体人間といふものは、空想と実際との食ひ違ひの中に気息奄々として(拙者なぞは白熱的に熱狂して――)暮すところの儚ない生物にすぎないものだ。この大いなる矛盾のおかげで、この 箆棒べらぼうな儚なさのおかげで、兎も角も豚でなく、蟻でなく、幸ひにして人である、と言ふやうなものである、人間といふものは。

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中島敦

【盈虚】

 原の一隅に、不思議と、人家らしいもののかたまった一郭が見えた。公は漸く其処迄辿り着き、気息 奄々えんえんたるさまとっつきの一軒に匍い込む。扶け入れられ、差出された水を一杯飲み終った時、到頭来たな! という太い声がした。驚いて眼を上げると、此の家の主人らしい・あから顔の・前歯の大きく飛出た男がじっと此方を見詰めている。一向に見憶えが無い。

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岸田國士

【戦時下の文化運動 ――九州地方講演筆記――】

 即ち彼等の文化は、既に理想を失つた国々の気息奄々たる文化であると思ふのであります。辛うじてその文明が、民族の力を支へてゐるにすぎない。いかに精緻巧妙な衣を纏うてをりましても、人間の慾望が神の前に屈しないといふことはないのであります。その証拠に彼等多くの国々は、文明の奴隷たるにすぎない有様になつてをるのであります。

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岡本綺堂

【中国怪奇小説集 続夷堅志・其他】

 女は容貌きりょうがすぐれて美しい上に、その服装もここらには見馴れないほどに美麗なものであった。こんな女がどうしてここにいたのか、その子細をたずねようとしても、彼女は 気息奄々きそくえんえんとしてあたかも昏睡せる人の如くである。そこへ他の諸生らも集まって来て、これはおそらく本当の人間ではあるまい、鬼がこんな姿に変じて我々をあざむくのであろうなどと言いながら、しばらく遠巻きにして窺っていると、女はやがて眼をあいて、あたりを見まわして驚き怖れるような様子であった。

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西尾正

【放浪作家の冒険】

 腹がさっぱりするまでかなりながい時間がかかった。さて部屋にかえろうと廊下をもどってゆくうちに、さっきまがった角がわからなくなってしまった。とにかくかんで、さいしょの階段ににかよったところまででたが、なにぶんひろい家なので、ここだと確信はできない。酔いがさめたためにかえって勝手のわからなくなることはよくある。まごまごすればよけいまよいこんでしまいそうなので、なんとかなるだろうという気で、眼のまえの階段をあがっていった。廊下をはさんでおなじような部屋がふたつ、むかいあってならんでいる。たしか左の部屋だったと、無造作にあけようとした瞬間、その部屋のなかから、 気息奄々きそくえんえんたる女のうめきがきこえてきたから、たまげた。

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久生十蘭

【顎十郎捕物帳 稲荷の使】

 葉いちめんに灰色や黒の斑点が出来て艶がなくなり、ぐったりと葉を垂れて、いわば、気息 奄々えんえんというていである。
 庄兵衛の狼狽ぶりは目ざましいほどで、せっせと水をやったり削節けずりぶしの汁をやったりするが、一向に生気がつかない。手をつくせばつくすほどいよいよいけなくなるように見える。毎朝起きぬけから縁先に突っ立っているが、つくせるだけの手はつくして、もうどうするという名案もない。愁傷の眉をよせて、手を束ねているよりほかないのである

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北條民雄

【いのちの初夜】

 二列の寝台には見るに堪えない重症患者が、文字どおり気息 奄々えんえんと眠っていた。誰も彼も大きく口を開いて眠っているのは、鼻を冒されて呼吸が困難なためであろう。尾田は心中に寒気を覚えながら、それでもここへ来て初めて彼らの姿を静かに眺めることができた。赤黒くなった坊主頭が弱い電光に鈍く光っていると、次にはてっぺんに大きな絆創膏を貼りつけているのだった。

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永井荷風

【江戸芸術論】

 雪中の光景もまたおおいに称賛せざるを得ず。小止おやみもなく紛々として降来ふりくる雪に山はそのふもとなる海辺うみべの漁村と共にうずも天地寂然てんちせきぜんたる処、日蓮上人にちれんしょうにんと呼べる聖僧の吹雪ふぶきに身をかがめ苦し山路やまじのぼり行く図の如きは即ち然り。(訳者曰くこれ日蓮上人一代記八枚続のうち佐渡ヶ島の図の事なり。)されど以上述べたるは皆例外の逸品にして吾人の浮世絵なる美術が 気息奄々きそくえんえん としてしかもなほ容易にその死期に到達せざりしは全くこれら例外なる傑作ありしがためなるを知る。」

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田畑修一郎

【医師高間房一氏】

 男の顔は泥と血で汚れ、かすり傷が一面についてゐた。顎の所にかなりひどい裂傷があり、血糊が固くこびりついてゐた。どこか打撲傷をうけたらしく、一見したところ 気息奄々きそくえんえんとしてゐたが、房一が手拭をとり除いたときに、男はかすかに眼を開けて房一の顔を見た。
 二人が男を抱き起して、レザア張りの診察台へつれて行つた。男は殆どされるまゝになつてゐたが、身体は案外自由が利くらしく片手をつかつて横になつた。そして又もやぱつちりと眼を開け、不安さうに房一を見上げた。

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Last updated : 2024/06/28