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九死一生
きゅうしいっしょう
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作家
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作品
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【雪霊記事】
私はよく知っています――六本指なぞと、気もない事です。確に見ました。しかもその雪なす指は、摩耶夫人が召す白い細い花の手袋のように、正に五弁で、それが九死一生だった私の額に
密と乗り、軽く胸に掛ったのを、運命の星を算えるごとく熟と視たのでありますから。――
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【良夜】
足だまりの城として伯父より添書ありしは、浅草三間町の深沢某なり。この人元よりの東京人にてある年越後へ稼ぎに来りしが病に罹りて九死一生となり、路用も遣い果して難渋窮まりしを伯父が救いて全快させしうえ路用を与えて帰京させたれば、これを徳として年々礼儀を欠ず頼もしき者なればとて、外に
知辺もなければこの人を便りとしたりしなり。
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【大菩薩峠 不破の関の巻】
熊を洗濯することに我を忘れていた米友は、道庵先生の九死一生の絶叫を聞き漏すことではありません。
俄然として醒めて、そうして声のする方を見ると、今し道庵が、二人の雲助のために無理無態に駕籠の中に押込まれて、担ぎ去られる瞬間でしたから、すっくと熊を抛擲して立ち上りました。
しかし、この際、米友の責任感としては、前後の事情を忘却することを許しません。わが師と頼む道庵先生が、またしてもの九死一生の危急を瞬時も猶予すべきではないが、同時に、この動物をこのままにして置いてはいけないということの、民衆的警戒性が
閃きました。
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【ノンシャラン道中記 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻――】
どこを、どう辿ったのかまるで夢中でサン・フロランタンの「旅館・金の鶏」というのにころげこんだのは九時近く。二人は九死一生の思い。――食卓をへだてて顔を見合せながら、たがいの無事を祝っていると、さっきの男が
鬱金色の前掛けを胸から掛けて、スウプの鉢を持ち出して来た。
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【後の業平文治】
文「いや左様でない、幸いに文治は二度も難船して、九死一生の難儀をしたが、肌身離さず持っていた金は失わぬ、さアこの
金子でお浪を請出し、そちは後からまいれ、礼は江戸で致すぞよ」
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【空屋】
げに旅人は佐太郎なり、彼は今ただ一人帰れるなり、彼はさきに身を立つべき資を得んと百日余り命を賭け牛馬のごとく追い使われしが、今は危難と苦役の地獄を出て、懐かしき家路に上り、はるばるも故郷の橋を渡れるなり、彼が喜悦に溢るる心緒は、熊本籠城の兵卒が、九死一生の重囲を出でて初めて青天白日を見たるその
嬉しさにも優るべく、いと重げなる黄金の包みのその懐に満々たるは、征西将軍が拝受したる菊桐の大勲章よりもその身にとってありがたかるべし、
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【大菩薩峠 駒井能登守の巻】
「どうかお助けなすっておくんなさいまし、どなた様かは存じませぬが、九死一生の場合でございます、お見かけ申してお願い申すんでございます、どうかお助けなすって下さいまし」
駕籠の傍へ手をついたのは、なるほど、九死一生と見えて髪は乱れ、白い着物は裂け、身体じゅう
突傷だの擦傷だので惨憺たるもので、その上に右の片腕が一本無い男であります。
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【白峰山脈縦断記】
鼠色の凶兆はあった、それから間もなく、疾風豪雨になって、一行は、九死一生の
惨めな目に遇わされた。
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【両国の秋】
「旦那、ようござんすかえ。姐さんは九死一生という場合なんですぜ。お屋敷の御用は仕方がありませんが、ほかの何事をおいてもここへ来なけりゃあ義理が済みませんぜ。どうで死ぬもんだからなんて薄情なことはしっこなしですぜ」
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【海島冐險奇譚 海底軍艦】
私は今(喰殺(されるのは覺悟(の前(だが、どうせ死(ぬなら徒(は死(なぬぞ、斯(く睨合(つて居(る間(に、先方(に卯(の毛(の虚(でもあつたなら、機先(に此方(から飛掛(つて、多少(の痛(さは見(せて呉(れんと考(へたので、眼(を放(たず睥睨(して居(る、猛狒(も益々(猛(く此方(を窺(つて居(る、此(
九死一生
(の分(れ目(、不意(に、實(に不意(に、何處(ともなく一發(の銃聲(。
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Last updated : 2024/06/28