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孤独寂寥
こどくせきりょう
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作家
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作品
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【おしゃれ童子】 こんどは、黒のラシャ地を敬遠して、コバルト色のセル地を選び、それでもって再び海軍士官の外套を試みました。乾坤一擲の意気でありました。襟は、ぐっと小さく、全体を更に細めに華奢に、胴のくびれは痛いほど、きゅっと締めて、その外套を着るときには、少年はひそかにシャツを一枚脱がなければならなかったのでした。この外套に対しては、誰もなんとも言いませんでした。友人たちも笑わず、ただ、へんに真面目なよそよそしい顔になって、そうしてすぐ顔をそむけました。少年も、その輝くほどの外套を着ながら、流石に孤独
寂寥の感に堪えかね、泣きべそかいてしまいました。お洒落ではあっても、心は弱い少年だったのです。とうとうその苦心の外套をも廃止して、中学時代からのボロボロのマントを、頭からすっぽりかぶって、喫茶店へ葡萄酒飲みに出かけたりするようになりました。
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【憑きもの】 顔を伏せて河原の小石を眺める。初夏の陽は照っているのに、その温かみを背には感ぜず、渓流に沿って流れる冷気が身内に伝わってくる。
孤独、寂寥、そういう思いの中に私は沈む。寂寥が渦を巻いて、その中心に、寂寥の眼とも言えるものがある。恰も颱風の中心みたいに、その眼も真空だ。
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Last updated : 2024/06/28