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孤軍奮闘
こぐんふんとう
作家
作品

中島敦

【李陵】

ただ一人、苦々しい顔をしてこれらを見守っている男がいた。今口を極めて李陵を讒誣ざんぶしているのは、数か月前李陵が都を辞するときにさかずきをあげて、その行をさかんにした連中ではなかったか。漠北ばくほくからの使者が来て李陵の軍の健在を伝えたとき、さすがは名将李広りこうの孫と李陵の孤軍奮闘たたえたのもまた同じ連中ではないのか。てんとして既往を忘れたふりのできる顕官けんかん連や、彼らの諂諛てんゆを見破るほどに聡明そうめいではありながらなお真実に耳を傾けることをきらう君主が、この男には不思議に思われた。

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菊池寛

【島原の乱】

重昌之を見て、松倉重次に応援を命ずると、卑怯の重次は、勝てば功は忠茂に帰し、敗るれば罪我に帰すとして兵を出そうとしない。重昌は忠茂の孤軍奮闘するを危んで、退軍を命ずるが、土民軍に軽くあしらわれた怒りは収らず、なかなか服しようとはせず、軍使三度到って漸く帰陣した。

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坂口安吾

【中庸】

「君は手弁当で村のために献身する人ではないか。別して、学校再建のためには人知れず孤軍奮闘している人だ。学校再建のためにすでに相当の私財をそそいでいる筈ではなかったかね。この床板に限って取返すとはわけが分らないじゃないか」

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太宰治

【正義と微笑】

此の事件は、まだ、他の親戚しんせきの者には知られていないようだが、いまのところでは、姉さんの味方は、お母さんに、チョッピリ女史。鈴岡さんの味方は、兄さんひとり。兄さんは、孤軍奮闘の形だ。兄さんは、このごろ、とても 機嫌きげんが悪い。夜おそく、ひどく酔っぱらって帰宅した事も、二三度あった。

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犬田卯

【瘤】

――これとて未だ海のものか山のものか分りはしない。
 結局、「孤軍奮闘」は覚悟しなければならない状態だった。田辺定雄とて、それは最初から――出ると決意した以上――免れ得ぬ事実と考えていたので、あえて驚きはしなかったが。

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山下博章

【「プラーゲ旋風」の話】

以上述べたような次第であるから、プラーゲ旋風は起るべくして起っており、然して之を起している者はプラーゲ自身ではなくて、寧ろ楽壇人であると云える。プラーゲは単身日本に乗込んで、孤軍奮闘を続けているが、其の武器は法律と条約であり、其の戦術は飽迄も合理合法である。然るに楽壇人の遣り口は何うであるか? 徹頭徹尾非合理非合法である。

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吉川英治

【私本太平記 あしかが帖】

勿体もったいなやと、清子は聞くうちにも、兄のやつれを瞼にうかべた。
 みだれた幕政と権力の百鬼を相手に、いかに兄憲房が、孤軍奮闘したことかと、その 惨心さんしんが察しられる。

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Last updated : 2024/06/28