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故事来歴
こじらいれき
作家
作品

永井荷風

【日和下駄 一名 東京散策記】

小石川植物園内の大銀杏は維新後あやうり倒されようとしたおのの跡が残っているために今ではかえって老樹を愛重あいちょうする人の多く知る処となっている。東京市中にはもしそれほどの故事来歴を有せざる銀杏の大木を探り歩いたならまだなかなか数多いことであろう。

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織田作之助

【木の都】

藤原家隆卿であらうか「ちぎりあれば難波なにはの里にやどり来て波の入日ををがみつるかな」とこの高台で歌つた頃には、もう夕陽丘の名は約束されてゐたかと思はれる。しかし、再び年少の頃の私は、そのやうな故事来歴あづかり知らず、ただ口繩坂の中腹に夕陽丘女学校があることに、年少多感の胸をひそかに燃やしてゐたのである。

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坂口安吾

【明治開化 安吾捕物 その十三 幻の塔】

「相変らずの石頭だなア。尊公は。三次郎が盗ッ人を殺すワケがあるかえ。当身あてみで倒す腕もある。まして祝言の当夜だぜ。石頭には人の心が解けないなア。人の心には曰くインネン故事来歴があって、右が左にはならないものだぜ。ちとオレの小説を学ぶがいいや」
「ハッハッハ。貴公の犯人は誰だえ」

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内田魯庵

【八犬伝談余】

馬琴の衒学癖げんがくへきやまい膏肓こうこうったもので、無知なる田夫野人でんぶやじんの口からさえ故事来歴を講釈せしむる事が珍らしくないが、自ら群書を渉猟する事が出来なくなってからも相変らず和漢の故事を ならべ立てるのは得意の羅大経らたいけいや『瑯琊代酔篇ろうやたいすいへん』が口をいてづるので、その博覧強記が決して俄仕込にわかじこみにあらざるを証して余りがある。

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久生十蘭

【顎十郎捕物帳 丹頂の鶴】

精もこんも吟味の練磨れんまに打ちこんで、こうも身を痩せさせているのは、しゃれや冗談でやっているのではありません。多寡がおっこちた鶴一羽。ひと目、創をあらためて、いわく因縁いんねん 故事来歴こじらいれき、死んだものか殺されたものか、突き創なら獲物はなに。どういうやつが、どんなぐあいにどういうわけあいでやったものか、その場で即答できねえようでは、お上の御用はつとまらない。

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夢野久作

【難船小僧】

現在、陸上おかでは酒場のみやでも税関でも海員ふね奴等やつらが寄るとさわるとそのうわさばっかりで持切もちきってますぜ。アラスカ丸の船長おやじはそんないわく因縁、故事来歴附の小僧だって事を、知って拾ったんだか……どうだかってんでね。

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  • それぞれの四字熟語の詳しい意味などは、辞典や専門書でお確かめください。
  • このサイトの制作時点では、三省堂の『新明解 四字熟語辞典』が、前版の5,600語を凌ぐ6,500語を収録し、出版社によれば『類書中最大。よく使われる四字熟語は区別して掲示。簡潔な「意味」、詳しい「補説」「故事」で、意味と用法を明解に解説。豊富に収録した著名作家の「用例」で、生きた使い方を体感。「類義語」「対義語」を多数掲示して、広がりと奥行きを実感』などとしています。

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Last updated : 2024/06/28