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古今東西
ここんとうざい
作家
作品

正岡子規

【人々に答ふ】

子にも標準あるべし。われらにも標準あるなり。ただ古今東西に通ずる標準と言ひしを以て誤解を来たせるが如し。文学の標準といへば古今東西に通ずる事は言はでも善かりしなり。既に標準といふ、 いにしえの歌を評すると今の歌を評するとによりて相異なるべくもあらず、東洋の歌を評すると西洋の歌を評するとによりて相異なるべくもあらず。古今東西に通ずるとはこの事なり。

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森鴎外

【柵草紙の山房論文】

逍遙子のいはく。烏有先生が談理を重んずべしといふや、つねに絶對の意味にていふか。即ち古今東西の大なる談理家即ち哲學者といふきはをも、そが眼中に置きていへるならむ。

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芥川龍之介

【芭蕉雑記】

芭蕉の語彙ごゐはこの通り古今東西に出入してゐる。が、俗語を正したことは最も人目に止まり易い特色だつたのに違ひない。又俗語を正したことに詩人たる芭蕉の大力量も うかがはれることは事実である。

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小川未明

【男の子を見るたびに「戦争」について考えます】

これ等の心やりも、注意も、みな子供に対する深い愛からに他ありません。自分が子供を持ってみて、はじめて他の親たる人達の心も理解されるのです。自分の子供が可愛ければ、他の子供にもやさしくなるのは、この道理であります。
 このことは、古今、東西、国を異にし、また種族を異にしても相違のある筈はないでありましょう。こゝに思い至るたびに、私は、戦争ということが、頭に浮び、心が暗くなるのを覚えます。
 戦争! それは、決して空想でない。しかも、いまの少年達にとっては、これを空想として考えることができない程、現実の問題として、真剣に迫りつゝあることです。

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太宰治

【砂子屋】

書房を展開せられて、もう五周年記念日を迎えられる由、おめでとう存じます。書房主山崎剛平氏は、私でさえ、ひそかに舌を巻いて驚いたほどの、ずぶの夢想家でありました。夢想家が、この世で成功したというためしは、古今東西にわたって、未だ一つも無かったと言ってよい。

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幸田露伴

【ねじくり博士】

当世の大博士にねじくり先生というがあり。中々の豪傑、古今東西の書を読みつくして 大悟たいごしたる大哲学者と皆人恐れ入りて閉口せり。

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狩野亨吉

【歴史の概念】

人類の歴史は古今東西に亙り現出した思想・行爲の知識の體系として成立する。普通歴史と稱するは即ちこの歴史を指すものであることは、異論を唱へるものが無いであらう。

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平林初之輔

【黒岩涙香のこと】

彼は黒岩という世にも頑固な姓と、涙香という世にもやさしきペンネームとの持ち主であったように、性格や趣味も非常に多方面的であったらしい。中でもいちばん私に興味のあるのは、彼が、非常に賭博の研究家で、古今東西の賭博に関する知識は驚くべきものであったということ、そして単に知識が深いのみならず、実際にも賭博が非常に好きであったということである。

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岸田國士

【文化勲章に就て】

科学文学芸術の領域では、官吏や実業家と違ひ、直接、国家へのサーヴイスの程度で、その仕事の「文化的価値」を判断するのは間違ひだといふことは、古今東西の歴史を通じて明かな点であるが、その間違ひが絶えず何処でも繰返されてゐるところをみると、日本だけは、なまじつか半可通を振りまはさない政治家によつて事が運ばれることに、十分期待がかけられないこともない。

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小出楢重

【めでたき風景】

近代の足はすでに、顔であり、手の一種である。その上、皮膚そのものの露骨さを、手袋の如く、うすき絹を以て包んでいるが、昔のくの字は、重く厚きすその中に隠れていながら、かの浮世絵に見る如く風に翻える時、むしろ深刻なものを発散すると私は考える。
 先ずどちらにしても、古今東西、足が誘惑する事において変りはない。
 先ごろ女中のお梅が市場へたこを買いに行った時、なるべく足の沢山あるのを下さいといったら魚屋のおやじが、蛸の足は昔から八本ときまってますと答えた。

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Last updated : 2024/06/28