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群雄割拠
ぐんゆうかっきょ
作家
作品

原勝郎

【東山時代における一縉紳の生活】

 論者は往々にして足利時代殊に応仁以後の群雄割拠の状態から概論して、これを乱世だという。また群盗の横行に徴してこれを秩序紊乱(びんらん)の時代だとする。


 群雄割拠の中央集権を妨げたのは、もとより極めて明白なことで、何人といえどもこれを否むものはあるまい。しかしながら藤原時代以前、すなわち群雄割拠のなかったと見なされる時代に、はたして、どれだけの中央集権の実があったろうか。中央政府の勢力が広く波及したようでも、その把握力が極めて脆弱(ぜいじゃく)なものでなかったろうか、中枢がただ一つであったということは、必ずしもその中枢の集中力の強大を意味するものではない。のみならず悲観論者は、群雄割拠になると、その群雄の各々の領内には数多の群盗が横行して、その秩序はいやが上に乱脈になると想像するらしいが、これが果して肯綮(こうけい)にあたった想像であろうか。もしこの想像が正鵠(せいこう)を得るものとすれば、ローマ帝国時代よりも、近世国家の樹立以後における欧洲の秩序が、一層紊乱しておらなければならぬ。

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岡本綺堂

【中国怪奇小説集 剪燈新話】

 元(げん)の末には天下大いに乱れて、一時は群雄割拠の時代を現じましたが、そのうちで方谷孫(ほうこくそん)というのは浙東(せっとう)の地方を占領していました。そうして、毎年正月十五日から五日のあいだは、明州府の城内に元宵(げんしょう)の燈籠をかけつらねて、諸人に見物を許すことにしていたので、その宵々(よいよい)の賑わいはひと通りでありませんでした。

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宮本百合子

【新年号の『文学評論』その他】

 このことからある人々の考えるように、雑誌を中心として広汎な意味でのプロレタリア作家たちが一城一廓をかまえ群雄割拠する状態と固定させて見るのは正当を欠く観察であろうと思われる。

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中里介山

【大菩薩峠 勿来の巻】

 薩賊、長奸(ちょうかん)というような言葉を絶えず口にする。とにもかくにも、薩長あたりが中心となって、末勢の徳川を圧迫する、そこで天下は二分する、二分して関ヶ原以前の状態にもどる、秀吉と信長以前の状態に一度逆転すると見ている。やがてまた群雄割拠の世になるかどうか知れないが、東西二大勢力が出来て、当分はこれが相争うのだ。その時の用意として、自分は、東北の海岸の地形や要害を見て廻っている。

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Last updated : 2024/06/28