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迷惑千万
めいわくせんばん |
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作家
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作品
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二葉亭四迷 |
【小説総論】
人物の善悪を定めんには我に極美(アイデアル)なかるべからず。小説の是非を評せんには我に定義なかる可らず。されば今書生気質の批評をせんにも予め主人の小説本義を御風聴して置かねばならず。本義などという者は到底面白きものならねば読むお方にも退屈なれば書く主人にも迷惑千万、結句ない方がましかも知らねど、是も事の順序なれば全く省く訳にもゆかず。因て成るべく端折って記せば暫時の御辛抱を願うになん。
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岸田國士 |
【劇的伝統と劇的因襲】
これも、絶対に作品の芸術的価値を高めるものではない。殊に、舞台の機械的装置によつて、観衆を眩惑しようと試みるが如きは、演劇と見世物とを混合するものであり、この種の演劇の道具に使はれる戯曲こそ迷惑千万だといはねばならぬ。
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与謝野晶子 |
【婦人指導者への抗議】
その人たち自身の処世法としては自由であると思いますが、それを印刷物や手紙やで私たちにまで勧告されるに到っては迷惑千万だといわねばなりません。そのような非人情的な運動に、他人の感触を害してまで力瘤(ちからこぶ)を入れられる必要が何処にあるでしょうか。
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芥川龍之介 |
【糸女覚え書】
その次には又わたくしどもにも思ひ思ひに姿を隠させ、最後に両人のお留守居役だけ覚悟仕るべき場合に御座候。然るに人質に出で候はん人、一人も無之候へば、出し申すことなるまじくなどとは一も二もなき喧嘩腰にて、側杖(そばづゑ)を打たるるわたくしどもこそ迷惑千万に存じ候。
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末弘厳太郎 |
【小知恵にとらわれた現代の法律学】
学者のこれに対する公平な批評すらきらうというに至っては、いったい国家民衆のために法律を作るのか、自己のヴァニティーのためにむりに我を押し通すのかわからなくなります。かかる結構な法律のもとで租税を納めるわれわれこそ実に迷惑千万な話であります。
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岡本かの子 |
【ガルスワーシーの家】
其の時ガルスワーシーは北側の壁の中央に在るマントルピースの上に立てかけてあった小さい額を取り卸(おろ)して来て日本人達に見せた。彼に取っては迷惑千万な宗教問題を得たり賢しと自分に引取って面白くもない自己吹聴を並べたてる回々(マホメット)教徒の女の誇張した恍惚感の説明や排他的な語気は、たとえ相客が表面無礼を感ぜぬように装って居るにしても主人側から見て英国人のサロンの空気をにがにがしくするように思った。
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坂口安吾 |
【青鬼の褌を洗う女】
私はしかし母を愛していなかった。品物として愛されるのは迷惑千万なものである。人々は私が母に可愛がられて幸福だというけれども、私は幸福だと思ったことはなかった。
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幸田露伴 |
【蒲生氏郷】
これは氏郷に取っては旅行に足弱を托(かず)けられたようなもので、何事も無ければまだしも、何事か有った時には随分厄介な事で迷惑千万である。が、致方は無い、領承するよりほかは無かったが、果して此の木村父子から事起って氏郷は大変な目に会うに至って居るのである。
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海野十三 |
【鬼仏洞事件】
“なるほど、洞内に於て、何某(なにぼう)が死亡しているようであるが、その写真で明瞭であるとおり、何某から五六メートルも離れた位置より、彼等の内の何人たりとも何某の首を切断することは不可能事である。況(いわ)んや、彼等の手に、一本の剣も握られていないことは、この写真の上に、明瞭に証明されている。理由なき抗議は、迷惑千万である”
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中里介山 |
【大菩薩峠 慢心和尚の巻】
けれども、さし当っての問題は、預けられたこの女をどうするかということであります。執念深い神尾主膳の一味はこの女を生捕(いけど)って、また何か恥辱を与えんとするものらしい。さすがに尼寺は荒せなかったけれど、一歩踏み出すとあの始末です。甚だ迷惑千万ながら、兵馬としては、やはりこの駕籠を江戸まで送り届けることを、ともかくもしなければならないなりゆきになってしまいました。 |
甲賀三郎 |
【支倉事件】
「よし、では今は之だけにして置く。追って取調べるから、それまでによく考えて置け」「考えても知らぬものは知らぬ。そう/\度々呼出されては迷惑千万だ。それ以上聞く事がないなら帰して貰いたい」 |
紫式部 |
【源氏物語 若菜(下)】
「私の愛しているあなたにとって、あちらのことは迷惑千万に違いないが、それをあなたは許して、つまらない者の感情をまで思いやってくれる寛大な愛に比べて、私のはただお上が悪くお思いにならないかという点だけで苦労をしているのは、あさはかな愛の持ち主というべきですね」
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邦枝完二 |
【おせん】
さては近所(きんじょ)の生臭坊主(なまぐさぼうず)が、俗人(ぞくじん)そこのけに目尻(めじり)をさげて追(お)いすがるていたらく。所詮(しょせん)は男(おとこ)も女(おんな)もなく、おせんに取(と)っては迷惑千万(めいわくせんばん)に違(ちが)いなかろうが、遠慮会釈(えんりょえしゃく)はからりと棄(す)てた厚(あつ)かましさからつるんだ犬(いぬ)を見(み)に行(ゆ)くよりも、一層(そう)勢(きお)い立(た)って、どっとばかりに押(お)し寄(よ)せた。
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