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面従腹背
めんじゅうふくはい
表面では服従するように見せかけて、内心では反抗すること。[小学館 デジタル大辞泉]
作家
作品

坂口安吾

【 道鏡 】

 彼等のすべては個人主義者、利己主義者であった。彼等は一族の名に於て団結したが、それはただ共同の敵を倒すための便宜以外に意味はなかった。彼等はただ己れの利益と、己れの栄達を愛していた。そして、生れながらの陰謀癖と、我身の愛を知るのみの冷酷な血をもっていた。その老獪ろうかいな陰謀癖とつめたさは鎌足以来の血液だった。
 陰謀の主役は年長の永手よりも、むしろ若年の百川だった。永手は彼らの最長者であり、官職も中納言にすすんでいたが、百川はまだ二十五をまわったばかりで、取るにもたらぬ官職だった。然し、その老獪な策略と執拗な実行力はぬきんでていた。
 彼等のすべてが押勝の腹心だった。押勝にび、すすんで忠勤をはげみ、その報酬に官位の昇進を受けていた。彼等は面従腹背 めんじゅうふくはいを人の当然の行為であると信じていた。彼等はむしろ押勝よりも悪辣あくらつであり老獪であり露骨であった。百川は道鏡をしりぞけてのち、自分の好む天皇をたてる陰謀に成功した。更にその後、皇太子の廃立に成功したが、彼のすすめる親王を天皇は好まなかった。その天皇を責めたてて、四十余日、夜もねむらず門前にがんばりつづけ、わめきつづけて、天皇を根負けさせているのであった。
 彼等はむしろ押勝以上に策師であり、智者であり、陰謀家であり、利己主義者であり、かつ礼節も慎みもなかったから、押勝の専横に甘んじて、その下風に居すわる我慢がなかったのである。
 彼等の共同の目的は、押勝の失脚だった。するとそこへ、思いもうけぬ好都合の人物が登場してきた。それが弓削道鏡であった。

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坂口安吾

【 安吾の新日本地理 宝塚女子占領軍――阪神の巻―― 】

 もっとも小林一三さんの秘密の初志によると、半獣半神の神つどいに供するためではなくて、難民たちの風雅の会に供するためであったかも知れない。小林一三さんほどのケイ眼な実業家ですらも、一度はこの難民にだまされてもフシギはない。犬のヌケ穴からムリに身を現して一服もるという困難な所業が、全然他に活用する意志のない面従腹背の学習だということは誰にもはじめは分らない。これこそ難民の性格なのである。そして、サビに対して面従腹背の難民に保護せられたものが宝塚少女歌劇であるということが分ると、宝塚を理解するのはもう手間がかからない。
 あの楽屋口のひしめき、叫び、それからタメイキに耳をすましてごらんなさい。面従腹背のトモガラがひそかに忠誠を誓った神を迎える逆上ぶりなのである。要するにこのトモガラは面従腹背を一生の定めとしていることを現しているようなものさ。このトモガラは忠誠を誓った神の名を一生にタダ一度云うだけで、あとは生涯貝のようにフタをとじて語らない。

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Last updated : 2024/06/28