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年年歳歳/年々歳々
ねんねんさいさい
作家
作品

太宰治

【もの思う葦 ――当りまえのことを当りまえに語る。】

 けれども、私は、信じて居る。この短篇集、「晩年」は、年々歳々、いよいよ色濃く、きみの眼に、きみの胸に滲透して行くにちがいないということを。私はこの本一冊を創るためにのみ生れた。

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北村透谷

【我牢獄】

我は一個の忘ずること能はざる者を有せり、啻(たゞ)に忘ずること能はざるのみならず、数学的乗数を以て追々に広がり行くとも消ゆることはあらず、木葉(このは)は年々歳々新まり行くべきも、我が悲恋は新たまりたることはなくしていや茂るのみ、江水は時々刻々に流れ去れども、我が悲恋はよどみよどみて漫々たる洋海をなすのみ、不思議といふべきは我恋なり。

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牧野富太郎

【植物一日一題】

ゆえにこんなのは三度グリともいい得れば、また七度グリとも十度グリとも十五度グリともいい得るのである。このように年々歳々その切株から芽出たせば、上のようにじつに無限に連続的開花の現象を現わすが、もし一朝その樹を刈らず伐らずして自由に生長させると、敢えて常木と異なるところのない凡樹となり、ついにその特状が認められなくなってしまう。

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萩原朔太郎

【流行歌曲について】

そして一つの結論を得た。それはこの十年以来、日本の社会が日々に益々憂鬱になり、人心が絶望的に呻吟して、文化がその目的性と希望とを失ひ、年々歳々益々低落の度を深めて来て居るといふ事実である。

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岸田國士

【時 処 人 ――年頭雑感――】

 芝居の脚本を書くのには、まず、標題のつぎに、その劇が行われる時と場所と登場人物とを、はつきり書きあげるのが定石である。
 私はいま、ここで脚本を書くつもりはないが、年々歳々、違つた場所で正月を迎えるのが例のようになつてしまつた私の年頭感は、まず、ああ今年は、こんなところで年をとることになつたか! である。

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寺田寅彦

【天災と国防】

そうして、野生の鳥獣が地震や風雨に堪えるようにこれら未開の民もまた年々歳々の天変を案外楽にしのいで種族を維持して来たに相違ない。

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宮本百合子

【獄中への手紙 一九三七年(昭和十二年)】

体が弱いことに帰しているけれども、それは間違いです。もし体が丈夫でなければよい生き方が出来ないのなら、私たちなんか、年々歳々どこから生活に対するこのような愛や信を獲て来るのでしょう。

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木下尚江

【火の柱】

 国民の耳目(じもく)一に露西亜(ロシヤ)問題に傾きて、只管(ひたすら)開戦の速(すみや)かならんことにのみ熱中する一月の中旬、社会の半面を顧(かへりみ)れば下層劣等の種族として度外視されたる労働者が、年々歳々其度を加ふる生活の困苦惨憺(こんくさんたん)に、漸(やうやく)く目を挙げて自家の境遇を覚悟するに至り、沸騰(ふつとう)せんばかりの世上の戦争熱も最早(もはや)や、彼等を魔酔(ますゐ)するの力あらず、

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鳥谷部春汀

【明治人物月旦(抄)】

当時僅かに超然内閣の名義によりて一時を糊塗したるに止まり、事実は反つて政党の援助を得て内閣を支持したるは何ぞや爾来官属主義は独り藩閥者流若くは藩閥に隷事せる属僚の間に唱へらるゝに過ぎずして、年々歳々唯政党の勢力次第に膨脹するを見るのみ、是豈政党内閣の到底否定す可からざる理由に非ずや。

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相馬愛蔵

【私の小売商道】

東京市中十万の商店中毎年代がわりするもの少なくとも一万戸を下らずといえども、世人の多くはその代がわりの多きを知らず、年々歳々、各商店の繁栄を加うるものと信じて、同一の商店より買物をなしつつあるのである。

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林不忘

【煩悩秘文書】

したがってその家老めら、取りまき家臣ら、猟り役人、勢子(せこ)の末にいたるまで、役徳顔におんなをあらしまわり、田万里の村じゅう、老婆のほかは、ひとりとして逃れたものはござらぬ。まことに、口にもできぬことでござるが、人の母といわず、妻と言わず――これが年々歳々いつも猟りには付きもののこと! 今から思えば、村びと一同、よくあれまで踏みとどまったもので。」

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岡本綺堂

【我家の園芸】

しかも私の最も愛好するのは、そこらに野生の薄である。これは宿根の多年草であるから、もとより種まきの世話もなく、年々歳々おい茂って行くばかりである。

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小酒井不木

【名古屋スケツチ】

 とはいふものゝ、年々歳々、たえず変化はしつゝあるのだ。昭和三年には、昭和三年らしい色彩(いろどり)がある筈だ。

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牧逸馬

【ヤトラカン・サミ博士の椅子】

途中、古蒼(こそう)の宗教都市カンデイあり。史的興味と東洋色の極地を探ねて、遠く白欧より杖(つえ)をひく人士、年々歳々――うんぬん。

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内藤湖南

【学変臆説】

彼も亦轉々として周旋已まざれば、則ち地球が行く所の故路なる者も、亦唯だ太陽に對する關係に於て故たるに近きのみ、其實は年々歳々未だ經ざる大宇宙間を旋轉して進行する者ならざるを得ず、故に其の軌道は環形ならずして、螺旋形なることを知るべし。

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Last updated : 2024/06/28