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二重人格
にじゅうじんかく
作家
作品

芥川龍之介

【二つの手紙】

 更に進んで、第三者のみに現れたドッペルゲンゲルの例を尋ねますと、これもまた決して稀(まれ)ではございません。現に Dr. Werner 自身もその下女が二重人格者を見たそうでございます。


そのほか、「幽霊の性質に関する探究」の著者が挙げて居りますカムパアランドのカアクリントン教会区で、七歳の少女がその父の二重人格者を見たと云う実例や「自然の暗黒面」の著者が挙げて居りますH某(ぼう)と云う科学者で芸術家だった男が、千七百九十二年三月十二日の夜、その叔父の二重人格者を見たと云う実例などを数えましたら、恐らくそれは、夥(おびただ)しい数(すう)に上る事でございましょう。

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梶井基次郎

【ある崖上の感情】

「あれは俺の空想が立たせた人影だ。俺と同じ欲望で崖の上へ立つようになった俺の二重人格者だ。俺がこうして俺の二重人格を俺の好んで立つ場所に眺めているという空想はなんという暗い魅惑だろう。俺の欲望はとうとう俺から分離した。あとはこの部屋に戦慄と恍惚(こうこつ)があるばかりだ」

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與謝野寛

【素描】

おれは二十歳前後のおれと四十面下げたおれとの二重人格者を備へて居ることに自分ながら驚かざるを得なかつた。

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坂口安吾

【不良少年とキリスト】

 芥川は太宰よりも、もっと大人のような、利巧のような顔をして、そして、秀才で、おとなしくて、ウブらしかったが、実際は、同じ不良少年であった。二重人格者で、もう一つの人格は、ふところにドスをのんで縁日かなんかぶらつき、小娘を脅迫、口説いていたのである。

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寺田寅彦

【自画像】

 それで自画像第四号もとうとう仕上げずにやめてしまった。第三号は第一号のように意地の悪い顔であったがこの第四号は第二号のように温厚らしくできた。二重人格者者の甲乙の性格が交代で現われるような気がした。

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スティーブンソン ロバート・ルイス
佐々木直次郎訳

【ジーキル博士とハイド氏の怪事件】

私はひどい二重人格者ではあったが、決して偽善者ではなかった。私の善悪両方面とも、いずれも飽くまで真剣であった。私は、学問の進歩のために、または人 間の悲しみや苦しみを救うために公然と努力している時も、自制をすてて恥ずべき行ないにひたっている時も、同じように私自身であった。

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Last updated : 2024/06/28