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冷汗三斗
れいかんさんと |
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作家
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作品
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太宰治 |
【人間失格】
しかし、その時期のなつかしい思い出の中にも、たった一つ、冷汗三斗の、生涯わすれられぬ悲惨なしくじりがあったのです。自分は、検事局の薄暗い一室で、検事の簡単な取調べを受けました。
「ほんとうかい?」 |
太宰治 |
【津軽】
「お酒は、どうします? リユツクサツクに、ビールの二、三本も入れて置きませうか?」と、奥さんに言はれて、私は、まつたく、冷汗三斗の思ひであつた。なぜ、酒飲みなどといふ不面目な種族の男に生れて来たか、と思つた。
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太宰治 |
【花燭】
あまの岩戸を開(あ)けるような恰好して、うむと力こめたら、硝子戸はがらがらがら大きな音たてて一間以上も滑走し、男爵は力あまって醜く泳いだ。あやうく踏みとどまり、冷汗三斗の思いでこそこそ店内に逃げ込んだ。ひどいほこりであった。六、七脚の椅子も、三つのテエブルも、みんな白くほこりをかぶっていた。
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田中英光 |
【オリンポスの果実】
すると奥さんはたいへん丁寧(ていねい)にお嬢さんに向い、「佐保子や、お前坂本さんにダンスをお願いしなさい」と言われたので、ぼくは一遍(いっぺん)に冷汗三斗(れいかんさんと)の思いがしました。改めてお嬢さんの金糸銀糸でぬいとりした衣裳(いしょう)や、指に輝(かがや)く金剛石(ダイヤモンド)、金と教養にあかし磨(みが)きこんだミルク色の疵(きず)ひとつない上品な顔をみると、ぼくはダンスは下手だし、その手をとるのも恐(こわ)くなり、「駄目(だめ)です。
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正岡容 |
【わが寄席青春録】
それにしても金語楼君には報知講堂で、金馬君、正蔵君とはそれぞれ神田の立花亭で、別に先々代正蔵君のは銀座の東朝座での独演会を一席助演した。マ、それはいいとして、今日考えても冷汗三斗に堪えないのは二人会の場合、金語楼君なり金馬君なり正蔵君なりがその晩の上がり(収入)を折半して多分私には大阪からわざわざきたからとてやや余計分よこしてくれただろう、それを平気でノメノメもらってきてしまったということである。
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夢野久作 |
【お茶の湯満腹談】
もし一度でも翁の家の縁側に上る事が出来たら一代の名誉になろうと言う。そこへ金と言い、お茶の湯と言い、全然嗜(たしな)みのない本来無一物が、偶然中の偶然とも言うべき機会から、何も知らずに参室したのだから、一代の光栄どころでない。タッタ一時間ばかりの間に一代の恥辱を掻き上げてしまったらしい。全く「らしい」と思うだけである。実際は自分でもどうだったかわからないのだから、いよいよ以て冷汗三斗である。 |
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