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冷酷無情
れいこくむじょう |
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作家
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作品
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坂口安吾 |
【街はふるさと】
世間の激浪に損われた跡がミジンも見えない貴公子のようなこの青年に、彼の過去がすべてそうであったように、現在も冷酷無情な現実がヒシヒシとりまいていることを、はじめて長平は知ることができた。それを在るがまま受けいれて、彼の毅然たる魂は損われたことがないようだ。青年の後姿から光がさすようなのを長平は感じた。
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田中貢太郎 |
【一緒に歩く亡霊】
「老媼茶話」には奇怪な話が数多(たくさん)載っている。この話もその一つであるが、奥州の其処(あるところ)に甚六と云う百姓があった。著者はその人となりを放逸邪見類なき者也と云っている。兎に角冷酷無情の男であったらしい。
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林芙美子 |
【晩菊】
きんは吃驚した眼をして、「駄目よ。こんな私をからかはないで下さい」と、眼尻の皺をわざとちぢめるやうにして笑つた。美しい皓い入れ歯が光る。「いやに冷酷無情だな。もう、一切金の話はしない。一寸、昔のきんさんに甘つたれたンだ。
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林芙美子 |
【新版 放浪記】
ああ、やっぱり芝居をしようと思う。時計は十二時を打っている。二時間以上も待った。いろんな人の出入りに、邪魔にならぬように立っていることがつまらなくなって、戸外へ出る。何だって、あの男は冷酷無情なのかさっぱり判らない。無力なものをいじめるのが心持ちがいいのかも知れない。 歩いて根津権現裏の萩原恭次郎のところへ行く。 |
寺島柾史 |
【怪奇人造島】
「この少年を、追放してくれたまえ」青年技師は、冷酷無情にも、そう命じると、数名の男は、矢庭(やにわ)に僕の肩や、手をとった。僕はこれまで、幾度か生死の境をとおって来ているので、またも、この奇怪な氷の島から追放され、海へ放り込まれることを、それほど怖(おそ)れなかったが、しかし、何か曰(いわ)くのありそうな人造島の秘密を、何とかして探りたいとおもったので、むざむざと、海へ放り込まれたくはなかった。 |
横光利一 |
【旅愁】
杜から帰って来たらしい猟服のアルマンが一人這入って来た。マルグリットとの完全な愛の生活に彼は嬉しそうで身も軽やかに悦びの唄を歌う。そこへ女中が現れ、アルマンの悦びを打ち砕く第一撃を与え、興奮しながら出て行った彼の後へマルグリットが登場する。まことに隙なく燃焼しつつある二人が全力で美しく愛情を支え合っているときにも、過去が現在の幸福を冷酷無情に顛覆して進んでゆくのである。アルマンの老父が現れて別れをすすめ、哀願に変ると、ついに二人の未来は悲劇へと移っていった。
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