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老少不定
ろうしょうふじょう
作家
作品

夏目漱石

【こころ】

「しかしもしおれの方が先へ行くとするね。そうしたらお前どうする」
「どうするって……」
 奥さんはそこで口籠くちごもった。先生の死に対する想像的な悲哀が、ちょっと奥さんの胸を襲ったらしかった。けれども再び顔をあげた時は、もう気分をえていた。
「どうするって、仕方がないわ、ねえあなた。老少不定ろうしょうふじょうっていうくらいだから」
 奥さんはことさらに私の方を見て笑談じょうだんらしくこういった。

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正岡子規

【墓】

○斯う生きて居たからとて面白い事も無いから、一寸死んで来られるなら一年間位地獄漫遊と出かけて、一周忌の祭の真中へヒヨコと帰つて来て地獄土産の演説などは甚だしやれてる訳だが、併し死にツきりの引導渡されツきりでは余り有難くないね。けれど有難くないの何のと贅沢をいつて見たところで、諸行無常老少不定といふので鬼が火の車引いて迎へに来りや今夜にも是非とも死なゝければならないヨ。

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岡本綺堂

【半七捕物帳 津の国屋】

「どっちにしてもお安という娘は死ぬ、その相手だという竹の野郎もつづいて死ぬ。それでまあいちが栄えたいう訳なんだが、ここに一つ不思議なことは、忘れもしねえ今から丁度十年前……。これは師匠も知っているだろうが、津の国屋の実子のお清さんがぶらぶら病いで死んでしまった。そりゃあ老少不定ろうしょうふじょうで寿命ずくなら仕方もねえわけだが、その死んだのが丁度十七の年で、せんのお安という娘と同い年だ。お安も十七で死んだ。

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宮本百合子訳

【「平家物語」ぬきほ(言文一致訳)】

ほんとにお前は親不孝者の骨せう(ママ)じゃ」なんかといろいろにいましめたので瀧口は思うに「西王母と云う者も昔はあったようだけれ共今はないし、又東方朔と有名な物も名許りきいて居て目の前に見た事はない。老少不定のさかいは石火の光と同じ様なはかないものである。たとえ人が定まった命をたもつと云っても七十や八十にはならず、その短い内に人の体の盛と云う時はたった二十余年ぎりである。その短い間に自分の心にしたがって自分の愛して居るものをしじゅう見ようとすれば親の命をそむいて不幸になる。又、親の命にしたがえば女の心はめちゃめちゃになってしまうだろう。短い世の中にいやな

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福沢諭吉

【新女大学】

一 偕老同穴は夫婦の約束なれども、如何せん老少不定ろうしょうふじょうは天の命ずる所にして、偕老果して偕老ならずして夫の早く世を去ることあり。

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三木清

【親鸞】

世はさだめなきこそいみじけれ」と『徒然草』の著者は書いている(第七段)。いつまでも生きてこの世に住んでいるということが人間のならいであったら、実に無趣味なものであろう。老少不定、我々の命がいつ終わるという規定の全くない世であるが、そこが非常に面白いのである、というのである。

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中里介山

【大菩薩峠 禹門三級の巻】

「皆さん、老少不定ろうしょうふじょうと申して、悲しいことでございます、長らく皆様の御贔屓ごひいきになっておりました茂太郎が死にました……お驚きなさるのも御尤ごもっともでございます、皆様がお驚きなさるより先に、私が驚きました、

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三遊亭圓朝
鈴木行三校訂編纂

【名人長二】

お政さん御親切は分りやしたが、弟子師匠の縁が切れてみりゃア詫言わびことをする訳もねえからね、人は老少不定ろうしょうふじょうで、年をとった親方いゝや、清兵衛さんよりわっちの方が先へくかも知れませんから、ひとあてにするのア無駄だ、何でもてんでに稼ぐのが一番だ、稼いで親に安心をさせなさるがい、

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  • それぞれの四字熟語の詳しい意味などは、辞典や専門書でお確かめください。
  • このサイトの制作時点では、三省堂の『新明解 四字熟語辞典』が、前版の5,600語を凌ぐ6,500語を収録し、出版社によれば『類書中最大。よく使われる四字熟語は区別して掲示。簡潔な「意味」、詳しい「補説」「故事」で、意味と用法を明解に解説。豊富に収録した著名作家の「用例」で、生きた使い方を体感。「類義語」「対義語」を多数掲示して、広がりと奥行きを実感』などとしています。

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Last updated : 2024/06/28