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三世十方
さんぜじっぽう
作家
作品

高神覚昇

【般若心経講義】

八紘というのは四方八方です。世界、宇宙という事です。十方と同じ意味で、無限の空間、はてしない世界ということです。要するに三世十方とは、「無限の時間」と「無限の空間」ということです。元来仏教は、キリスト教のごとく、神は一つだという一神論に立っている宗教ではなくて、無量無数の 仏陀ぶっだの存在を主張する、汎神はんしん論に立脚しているのです。したがって仏教ではこの無限の時間、無限の空間にわたって、いつ、いかなる場所にでも、数限りない無量の仏がいられるというのですから、衆生しゅじょうの数が無限だとすると、仏の数もまた無限です。

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佐々木味津三

【右門捕物帖 開運女人地蔵】

「目があるんだ、目がな。おいらの目も安物じゃねえが、み仏のおん目は、三世十方お見通しだぜ。手数をかけりゃ、啖呵にもきっすいの江戸油をかけなきゃならねえんだ。早く恐れ入りなよ」

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高山樗牛

【瀧口入道】

戀とは言はず、情とも謂はず、ふや柳因りういんわかるゝや絮果ぢよくわ、いづれ迷は同じ流轉るてん世事せじ、今は言ふべきことありとも覺えず。只此上は夜毎よごと松風まつかぜ御魂みたますまされて、未來みらい解脱げだつこそ肝要かんえうなれ。仰ぎ願くは三世十方の諸佛、 愛護あいご御手おんてを垂れて出離しゆつりの道を得せしめ給へ。

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河口慧海

【チベット旅行記】

ああ、カン・リンボチェよ。釈迦牟尼仏しゃかむにぶつよ、三世十方さんせじっぽう諸仏しょぶつ菩薩ぼさつよ。私がこれまで幾人かの人を殺し、あまたの物品を奪い、人の女房を盗み、人と喧嘩口論をして人をぶん撲った種々の大罪悪を此坂ここで確かに懺悔しました。〔します。〕だからこれで罪はすっかりなくなったと私は信じます。これから後私が人を殺し人の物を奪い人の女房を取り人をぶん撲る罪も此坂ここで確かに懺悔致して置きます。

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中里介山

【大菩薩峠 慢心和尚の巻】

 倶胝ぐてい和尚は指をて、趙州じょうしゅう和尚はかしわの樹を指さしたということだから、慢心和尚がああして幽霊のような手つきをして、自分の円い頭を辷らしているところに、三世十方さんぜじっぽうを坐断する活作略かつさりゃくがあるのではなかろうか。これは一番、骨を折らずばなるまいと、汗水を流して本気になって、慢心和尚の妙な手つきをながめながらうなっている真面目な修業者もありました。

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Last updated : 2024/06/28