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浅酌低唱
せんしゃくていしょう 酒をほどよく味わいながら、小声で詩歌を口ずさみ楽しむこと。 |
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作家
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作品
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河東碧梧桐 |
【南予枇杷行】
両岸重畳の山々高からねど、翠微水にひたつて、風爽やかにたもとを払ふ。奇岩怪石の眼を驚かすものなけれど、深潭清澄の水胸腔に透徹す。男性的雄偉は欠くも、女性的和暢の感だ。ところ/″\早瀬に立つ友釣りの翁から、獲物の香魚をせしめて、船頭の削つた青い竹ぐしで焼きあげる。浅酌低唱的半日の清遊だつた。
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種田山頭火 |
【行乞記 (一)】
今町から志布志まで三里強、日本風の海岸佳景である、一里ばかり来たところに、宮崎と鹿児島との県界石標が立つてゐる、大きなタブの樹も立つてゐる、石よりも樹により多く心を惹かれるのは私のセンチメンタリズムか、夏井の浜といふところは海水浴場としてよいらしかつた、別荘風の料理屋もあつた、浅酌低唱味を思ひ出させるに十分だ。
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林不忘 |
【丹下左膳 乾雲坤竜の巻】
さもなくば、初冬
源十郎、自分で気がつくさきにもう片側の土塀に背をはりつけて、鼠絹長襦袢の袖をピリリと音のしないように破り取るが早いか、すっぽり頭からかぶって即座の覆面……汗ばむ手のひらを衣類にこすり
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