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情状酌量
じょうじょうしゃくりょう |
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作家
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作品
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織田作之助 |
【放浪】 オイチョカブの北田は何をっと一時は腹の虫があばれたが、しかし彼も今は土地での気受けもよく、それに小鈴のお産も遠いことではなかった。泣きたんの手で順平の無罪を頼み歩いたが、尻はまくらなかった。間もなく順平は送局され、一年三ヶ月の判決を下された。情状酌量すべき所無いでもないが、都亭主人を欺いて社会にとって危険極る人物となり、ために貴重な一つの生命を奪ったことは罪に値するという訳だった。一年三ヶ月と聴いて、涙を流した。 |
与謝野晶子 |
【姑と嫁について】
その動機に情状の酌量すべき所があっても、その事実が法文に触れているのであるから犯罪人として処刑されるのはやむをえない。殊に在来の道徳や習慣をその不用な部分までも背景にしている日本の法律では、嫁が姑を刺したという表面の大それた事実を重く見るので情状酌量の余地がない。それでこの犯罪は八年の懲役に処せられ、執行猶予の沙汰もなかったが、宣告の際に物優しい判事は獄則を
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宮本百合子 |
【それに偽りがないならば ――憲法の規定により国民の名において裁判する――鈴木裁判長】 自供すれば、また横谷君の事実無根のあれを認めれば、情状酌量される。もし私が真実を真実として闘えば破れるのか。」「泉川検事のいうことを本当にうけた。俺はもうだめだということを考えた。しかし死を決して真実を守ろうと思った。」二十三日に清水被告は「どうだね、考えたか」という泉川検事に向って答えた。「私は考えた。しかしいくら考えても嘘は云えない。たとえ仲間の者が何と云おうと私は最後まで真実を守って死ぬのだ。」「もし仲間の人たちに清水もやったということをいわれてそこで殺されるならば、仕様がない。」「もし清水がやったという人があるとしたらば、それはやっぱり恐怖にとりつかれたんでしょう。いかに他の人が何と云っても私は嘘はいえない。もし自供した人々が情状酌量されて、真実を主張して闘った者が極刑を課せられるならば止むを得ない。
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黒岩涙香 |
【血の文字】
好いか、此度の事件でもお前の白状は白状だ、夫にしてもお前の白状だけでは足りぬ、
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甲賀三郎 |
【支倉事件】
支倉は相変らず黙々として冷やかな眼で刑事の顔を見上げていた。「証拠は充分に上っているのだぞ」 石子刑事は歯がみをしながら云った。 「だまっていればいる程損なんだ。立派に白状すれば情状酌量と云う事がある。お前が強情を張る為に罪のない女房まで痛い目を見ているではないか」 「え、女房が調べられているって」 支倉はギクリとした。 |
岡本綺堂 |
【半七捕物帳 唐人飴】
「それにもお話があります。小三津の死骸は師匠の小三が引き取って、海光寺に葬りました。これは庄太の菩提寺です。その葬式の済んだ晩、照之助がそっと忍んで来て、小三津の新らしい墓の前で腹を切ろうとする処を、庄太に召し捕られました。もしやと思って張り込んでいたら、まんまと腕を斬られた二人、そのうちで岩蔵は癒りましたが、角兵衛はとうとう死にました。碌々に手当てをしなかった岩蔵が助かり、外科医の手当てを受けた角兵衛が死ぬ。人間の命は判らないものです。角兵衛が死んだ以上、照之助の命もない筈ですが、前に云ったようなわけで、一等を減じられたのでした」 |
豊島与志雄 |
【月評をして】
一度作品を公に発表する以上、その作品が如何に匇急の間に不満足に生み出されたものであろうとも、それが一個独立した作品として無条件に蒙るべき正当な批判を、そのまま受け容れるだけの覚悟は作者の方に在る筈である。創作当時の不利な情状をいつまでも作品にくっつけて、その情状の酌量を批評家に要求するほどのずるさは、作者の方にない筈である。情状酌量は、ただ作者自身の胸の中にしまっておくがよい、そして公正な批判を甘受するがよい。未来に対する信念や力や自省や努力やは、そういう所から生じてくる。峻厳な批判こそ真に人を救うものである。評家の側より之を観れば、情状酌量の批評を事とする時には、恐らく一人としてその煩に堪え得る者はあるまい。その月に発表せられた作品全部に対して、もしくは批判せんとする作品全部に対して、その創作当時の各作者の事情を知悉することは恐らく不可能であろう。随って、甲には情状を酌量して乙には情状を酌量しないという偏頗な結果を来す。偏頗は文壇を害するものである。寧ろ一切の情実を去って、直接作品のみに対する公正な批判を下すべきである。――但し、私は茲で月評のことを云うのである。 |
佐左木俊郎 |
【三稜鏡 (笠松博士の奇怪な外科手術)】
岡埜博士が銀鬚を扱きながら云った。「それはどうぞお使い下さいまし。西谷を欣ばしたいばかりに拵えた人形でしてな。それが飛んだ結果になりましたけど、西谷をもう一度以前の西谷にして頂けたら、私もどんなに嬉しいかわかりません」 「爺さんに犯罪意志の無かったことは十分に認める。情状酌量すべきものが十分ある。併し死体遺棄罪として一応は検事局へ……それから、西谷は、市立精神病院の岡埜博士の御手元へもう一度……爺さん! 決して心配などせんでいいから……」 署長は両の眼を |
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