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常住不断
じょうじゅうふだん
作家
作品

幸田露伴

【観画談】

しかし、何の、くだらないと思い返して眠ろうとしたけれども、やはりねむりに落ちない。雨は恐ろしく降っている。あたかも太古から尽未来際じんみらいざいまで大きな河のながれが流れ通しているように雨は降り通していて、自分の生涯のうちの或日に雨が降っているのではなくて、常住不断 じょうじゅうふだんの雨が降り通している中に自分の短い生涯がちょっとはさまれているものででもあるように降っている。で、それがまた気になってねむれぬ。鼠が騒いでくれたりいぬ が吠えてくれたりでもしたらば嬉しかろうと思うほど、他には何の音もない。

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徳田秋声

【縮図】

 銀子は好い気持もしなかったが、息詰まるような一年を振りかえると、悪い夢に襲われていたとしか思えず、二三年前に崩壊した四年間の無駄な結婚生活の失敗にも懲りず、とかく結婚が常住不断の夢であったために、同じことを繰り返した自分が、よほど 莫迦ばかなのかしら、と思った。

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下村湖人

【青年の思索のために】

・大事の思案と小事の思案


「大事の思案は軽くすべし」これは鍋島直茂の壁書の一条である。石田一鼎はこれに註して「小事の思案は重くすべし」といった。常住不断に小事の思案にとらわれて、大事の思案をおろそかにしている者にとっていずれもよき箴言である。

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豊島与志雄

【在学理由】

 世の中の害悪はただ習慣だけだ。習慣だけが人をずるずる引崩す。習慣でないものは、凡て新鮮で、何等かの意義を持っている。習慣のうちでも、最も恐ろしいのは飲酒と喫煙だ。それは常住不断の習慣――中毒にまで立至る習慣――になり得るからだ。所有慾や色慾……窃盗や放蕩も、常習になって初めて害悪で、発作的なのは潔白と云ってもいい。殺人などでさえも、発作的なものであるから、それ自体として、多くは潔白なものだ。

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夢野久作

【ドグラ・マグラ】

 しかしこれだけでは、あんまり簡単明瞭過ぎて、わかりにくいかも知れないから、今すこし砕いて説明すると、吾々が常住不断に意識しているところのアラユル慾望、感情、意志、記憶、判断、信念なぞいうものの一切合財は、吾々の全身三十兆の細胞の一粒一粒 ごとに、絶対の平等さで、おんなじように もっているのだ。

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中里介山

【大菩薩峠 小名路の巻】

 あまり面白いので、
ヤリ、ヤリ、ヒヒ、ヤリエウホフ
と吹いて行くと、
それとても苦しうござらぬ、若いが二たびあるにこそ、えい、そりゃ、枯木で花が咲くにこそ……
 どうしてこんなに面白いのだかわからない。自分で吹いて、自分の音色に聞き惚れていると、金の鈴を振るような制多伽童子の音声が、常住不断に耳もとで鳴りひびいています。心なき駕籠屋も、心して駕籠を揺れないように かついで行くものらしい。

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Last updated : 2024/06/28