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紫電一閃
しでんいっせん
作家
作品

海野十三

【空襲葬送曲】

 ガードの上と思われるあたりで、物凄い音響がした。
「ドッ、ドッ、ドッ、グワーン」それはまぎれもなく、高射砲隊の撃ちだした音だった。悠々と天下あまくだりながら、帝都の屋根を照らしていた光弾が、一瞬間にして、粉砕されてしまった。
 帝都の空は、又もや、元の暗黒に還った。
 と、思ったのは、それも一瞬間のことだった。
 サッと、紫電一閃 しでんいっせん! どこから出したのか、幅の広い照空灯が、ぶっちがいに、大空の真中で、交叉こうさした。
「呀ッ、敵機だッ」
 真白い、蜻蛉とんぼの腹のような機影が、ピカリと光った。

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野村胡堂

【大江戸黄金狂】

「ヒ、人、人殺しッ」
「馬鹿ッ、本街道は近い」
「た助けて――ッ」
 若い最高音を本街道が近いと聴くと、手加減もなく張り上げるのです。
「えッ、面倒、俺を怨むなッ」
 赤崎才市は小手を振りました。紫電一閃、お染は飛び散る血潮の中に、声もなく崩折れます。
 赤崎才市は血振いをして一刀を鞘に納め、娘の死骸を引起して、帯の間をさぐりました。

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関根黙庵

【枯尾花】

◎先年伊勢いせへ赴き、二週間ばかり滞在した事があった、ある夜友人に招かれて、贄崎にえさき寿楼ことぶきろうで一酌を催し、是非ぜひ泊れといったが、少し都合があって、同所を辞したのは午前一時頃である、楼婢ろうひを介して車をたのんだが、深更しんこう仮托かまけて応じてくれ無い、止むを得ず雨をついて、寂莫じゃくばくたる長堤をようやく城内までこぎつけ、藤堂采女とうどううねめ玉置小平太たまおきこへいたなど云う、藩政時分の家老屋敷の並んでいる、里俗鰡堀りぼくりゅうぼり差懸さしかかると俄然がぜん紫電一閃しでんいっせんたちまち足元があかるなった、おどろいて見ると丸太ほどの火柱が、光りを放って空中へ上る事、幾百メートルとも、測量の出来ぬくらいである、やがてそれがハラハラと四方に飛散するさまは、あたかも線香花火のきえるようであった、

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  • それぞれの四字熟語の詳しい意味などは、辞典や専門書でお確かめください。
  • このサイトの制作時点では、三省堂の『新明解 四字熟語辞典』が、前版の5,600語を凌ぐ6,500語を収録し、出版社によれば『類書中最大。よく使われる四字熟語は区別して掲示。簡潔な「意味」、詳しい「補説」「故事」で、意味と用法を明解に解説。豊富に収録した著名作家の「用例」で、生きた使い方を体感。「類義語」「対義語」を多数掲示して、広がりと奥行きを実感』などとしています。

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Last updated : 2024/06/28