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思慮分別
しりょふんべつ
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作家
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作品
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【新釈諸国噺】
男振りがようて若うて静かで優しくて思やりがあって上品で、口数が少くて鷹揚で喧嘩が強そうでたのもしくてお召物が粋で、何でもよくお気がついて、はたらきがありそうで、その上、おほほほ、お金があってあっさりして、と残りくまなくほめられて流石に思慮分別を失い、天下のお
大尽
とは私の事かも知れないと思い込み、次第に大胆になって豪遊を試み、金というものは使うためにあるものだ、使ってしまえ、と観念して、ばらりばらりと金を投げ捨て、
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【ある男の堕落】
彼が増長し出してから、折々苦いことをいうのは、始終彼の傍で彼を教育し、彼を助けてきたMさんとOだけでした。さすがの彼も、年下でも、自分よりはずっと、思慮分別も知識も勝れたMさんには、一目も二目もおいていました。
けれども、やがてそのMさんも、半分さじを投げたような無関心の時が来ました。誰も彼も、彼の図々しさにおそれをなして、彼を避けて通るようになりました。
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【連環記】
主人もこれには何共困るだろう、何とかして遣りたいが、差当って今何とすることもならぬ、是非が無い、自分が今帯びている石帯を貸してやるより道は無いと、自分が今催促されて参入する気忙しさに、思慮分別の
暇も無く、よしよし、さらば此の石帯を貸さんほどに疾く疾く主人が方にもて行け、と保胤は我が着けた石帯を解きてするすると引出して女に与えた。女は仏菩薩に会った心地して、掌をすり合せて礼拝し、悦び勇んで、いそいそと忽
ち走り去ってしまった。
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【夜光虫】
もっとも、豹吉は向うみずではあったが、莫迦ではなかった。
だからS署の前まで来た時、さすがにいきなり飛び込んで行くような、滅茶苦茶な真似はしなかった。
「どうしたら、最も効果的に救い出せるだろうか」
と、立ち停って考えてみるだけの、思慮分別は持っていた。
S署の玄関は、警官が出たりはいったりしていた。
制服ではないが、玄関の石段を登って行く歩き方で、
「私服だな」
と、すぐ判るものもいた。
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【星座】
似而非物では断じてない。俺がいったんでは不似合だが、まず神々しい innocence だ。そういうことを許してもいい。十九……十九……まったくこれが十九という娘の仕業だろうか。渡瀬は少し憚りながらも、まじまじとおぬいさんを眺めなおさずにはいられなくなった。骨節の延び延びとした、やや痩せぎすのしなやかさは十六七の娘という方が適当かもしれないが、争われないのは胸のあたりの暖かい肉づき、小鼻と生えぎわの滑かな脂肪だった。そしてその顔にはちょっと見よりも堅実な思慮分別の色が明かに読まれた。それにしてもあまり自然に見える、子供のように神々しい無邪気。渡瀬は承知しながらもおぬいさんの齢を聞いてみたくなった。そして突然、
「失礼、あなたはいくつになりますね」
と尋ねてみた。
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【泉】
「君細君と二人きりか?」
「いや、子供が一人ゐる。早いもんだらう」
「早いな。しかし、君は昔からなんでも早かつたよ」
「馬鹿云へ。そんなこと云や、君が恋愛小説なるものをはじめて僕に読ましたんだぜ」
「うゝん、そんなことぢやなくさ。君は、おれたち仲間のうちで、誰よりも一番思慮分別があつた」
「だから子供を早くこさへるつていふのは、どういふ論理だい?」
そんな戯談口をきいてゐるうちに、二人は魚籃坂下へもう来てゐた。電車通りを左へはひり、路地をいくつか曲り曲りした。
「こゝだ」
安藤は格子作りの門の潜り戸を引きあけた。
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【新書太閤記 第八分冊】
越中から京都への道と、備中高松からの道とでは、多少道路の嶮や距離の差に長短はあるにしても、秀吉が対していた局面と、勝家が向っていた戦局とでは、比較にならない難易があった。勝家の立場のほうがずっと有利であったことはいうまでもない。全面的転進を計るにも、戦場から離脱するにも、秀吉の場合よりは遥かに変じやすい事情にあったものを――なぜこう手間どって来たろうか。――要するに勝家の“自重万全”の観念が、この貴重なる“時”を代価としてあたら費やされて来たものというしかない。
かたがた、余りに彼が百戦の老巧だけに、その自信と体験が、いよいよ思慮分別の殻を厚くし、今次の如き天下一変の大転機に当っては、却ってそれが疾風的行動の
邪げとなっても、常套的な作戦変更という形式からついに一歩も飛躍し切れなかったことの一因といえよう。
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【水害雑録】
天災地変の禍害というも、これが単に財産居住を失うに止まるか、もしくはその身一身を処決して済むものであるならば、その悲惨は必ずしも惨の極なるものではない。一身係累を顧みるの念が少ないならば、早く禍の免れ難きを覚悟したとき、自ら振作するの勇気は、もって笑いつつ天災地変に臨むことができると思うものの、絶つに絶たれない係累が多くて見ると、どう考えても事に対する処決は単純を許さない。思慮分別の意識からそうなるのではなく、自然的な極めて力強い余儀ないような感情に壓せられて勇気の振いおこる余地が無いのである。
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Last updated : 2024/06/28