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死屍累累/死屍累々
ししるいるい
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作家
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作品
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【門】
彼の云うところによると、清水谷から弁慶橋へ通じる泥溝のような細い流の中に、春先になると無数の蛙が生れるのだそうである。その蛙が押し合い鳴き合って生長するうちに、幾百組か幾千組の恋が泥渠の中で成立する。そうしてそれらの愛に生きるものが重ならないばかりに隙間なく清水谷から弁慶橋へ続いて、互に睦まじく浮いていると、通り掛りの小僧だの閑人が、石を打ちつけて、無残にも蛙の夫婦を殺して行くものだから、その数がほとんど勘定し切れないほど多くなるのだそうである。
「死屍累々とはあの事ですね。それが皆夫婦なんだから実際気の毒ですよ。つまりあすこを二三丁通るうちに、我々は悲劇にいくつ出逢うか分らないんです。それを考えると御互は実に幸福でさあ。夫婦になってるのが悪らしいって、石で頭を破られる恐れは、まあ無いですからね。しかも双方ともに二十年も三十年も安全なら、全くおめでたいに違ありませんよ。だから一切ぐらい肖っておく必要もあるでしょう」と云って、主人はわざと箸で金玉糖を挟んで、宗助の前に出した。宗助は苦笑しながら、それを受けた。
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【一円本流行の害毒と其裏面談】
『中途ヘコタレ全集』 競争戦場に起って、ハヤ既にモロクもヘコタレて了ったのが数種あり、遣り切れなくて他へ譲ったり、債権者に取られたのが七八種あり、昨今青息吐息で維持策を講じて居るのが三十種ほどあり、味方の脱陣、糧食の欠乏、馬倒れ、刀折れ力尽きて此十二月末頃限りにヘコタレるのが少くも五六種、多ければ十種以上はある筈、間諜の手柄、分捕の功名で、トドの大詰まで首尾よく仕遂げて凱歌を奏するものはマー三四割であろう、社会を活舞台なりとすれば此長演大作の円本混乱戦は、餓死、切腹、討ち死、討たれ死の多い死屍累々、惨劇の珍たるものである、大当り/\
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【二流の人】
家康の夢は一さう地道だ。親代々の今川に見切をつけて信長と結んだ家康は、同盟二十年、約を守り義にたがはず、信長保険の利息だけで他意なく暮し、しかも零細な利息のために彼の為した辛労は甚大で、信玄との一戦に一身一国を賭して戦ふ。蟷螂の斧、このとき万一の僥倖すらも考へられぬ戦争で、死屍累々、家康は朱にそまり、傲然斧をふりあげて竜車の横ッ面をひつかいたが、手の爪をはがした。目先の利かないこと夥しく、みすみす負ける戦争に命をかけ義をまもる、小利巧な奴に及びもつかぬ芸当で、時に際し、利害、打算を念頭になく一身の運命を賭けることを知らない奴にいはゞ『芸術的』な栄光は有り得ない。芸術的とは宇宙的、絶対の世界に於けるといふことである。
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【空襲葬送曲】
パタリパタリと、群衆は、障子を倒すように、折重なって倒れていった。
街の片端から、メラメラと火の手があがった。濛々と淡黄色を帯びた毒瓦斯が、霧のように渦を巻いて、路上一杯に匍ってゆく。死屍累々、酸鼻を極めた街頭が、ボッと赤く照しだされた。市民の鮮血に濡れた、アスファルト路面に、燃えあがる焔が、ギラギラと映った。横丁から、バタバタと駈け出した一隊があった。彼等は、いずれも、防毒マスクを、頭の上から、スッポリ被っていた。隊長らしいのが、高く手をあげると、煙りの中に突進していった。後の者も、遅れずに、隊長のあとを追った。それは任務に忠実な、生き残りの青年団員でもあろうか。
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【私本太平記 婆娑羅帖】
――後の史家が、称んで“正中ノ変”となす、南北朝大乱の最初の火の手は、ついにこの朝、ここに揚った。
「わああっ……」
と、目標を圧縮してゆく武者声の潮、矢ひびき、太刀音。それも見るまに黒けむりとなり、真紅の群炎となった。そして、吹き狂う熱風は、早くも死屍累々の惨を地に照らし出している。
「残念だっ。女房にあまい頼春とは知っていたれど。……ええもう、追いつかぬ」
土岐左近は、戦い疲れて、自室に駈け入るやいな、腹十文字に掻ッ切って、炎の下に俯ッ伏した。
――同時刻。
小串則行の一勢は、京極附近で、ふた手に分れていた。
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Last updated : 2024/06/28