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志操堅固
しそうけんご
作家
作品

岸田國士

【かんしやく玉】

多田  奴さん、用がある時に限つてゐないんだから、始末にいけないなあ。
彼女  (現れ)ゐさうもない時に来るからわるいのよ。朝出て晩帰つて来るぐらゐのことはわかつてるでせう。
多田  不断はさうさ。だけど今先生仕事がないんだもの。
彼女  ないから探しに行くんぢやないの。
多田  (椅子に腰かけテーブルの上の新聞を取り上げ)今日は何処へ行つたの?
彼女  その、しるしのつけてあるとこでせう。
多田  なるほど、これやよささうだ。志操堅固なる青年紳士を求むか。
彼女  なに笑つてるの?
多田  僕にも一つ、心当りがあるんだけれど、まあ、こつちがうまく行かなかつた時のことにしよう。
彼女  あんたの心当りつていふのは、新聞広告より、もつと当てにならないわ。
多田  こなひだのは、あれや、失敗だ。独身つていふ条件があつたのを、つい、先生にいつとくのを忘れたんだ。
彼女  嘘をけば、後で困るぢやないの。第一、人を使ふのに独身を条件にするなんて、間違つてるわ。

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佐藤垢石

【純情狸】

 昼は、塾に通って勉学し、朝夕は花圃を散歩しながら書を読み、夜は二階の室にあって瞑想に耽った。
 ところで、下宿の二階から眺めた夜の景色は素晴らしい。なにしろ、紺屋町といえば厩橋城下における花街の中心地だ。絃鼓鉦竹に混じえて、美声流れ来たり流れ去るのである。
 花街に取りまかれ、嬌妓のなまめかしい唄を耳にしようが、笛太鼓の音をきこうが、仙公の佐々木彦三郎は、随分と志操堅固で、なにものにも心を動かさず、はや半年は過ぎた。
 交わるものは、学友ばかりであったのである。ところで、夏ある夜、仙公の佐々木彦三郎は、学友三、四人を集めて、下宿の二階で一盃のんだ。その夜また隣の芸妓屋から、若い妓の美しい声が流れ出て、彦三郎の室へ伝わってきた。学友いずれも耳を傾けたのである。

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海野十三

【人造物語】

 さて、今日云うところの人造人間ロボットの方は、今のところ、甚だ志操堅固しそうけんごな、いわゆる堅造かたぞうばかりで、性的サーヴィスをやって呉れるのは、ないようである。
 今日の人造人間をはじめ、多くの人造ものを産んだのは、このところ五十年ばかりの間に、異常な発達をとげた電気工学、物理化学のおかげである。

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  • それぞれの四字熟語の詳しい意味などは、辞典や専門書でお確かめください。
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Last updated : 2024/06/28