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質素倹約
しっそけんやく
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作家
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作品
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【二千六百年史抄】
秀吉は、聚楽第の造営や大仏殿の建立、大坂、伏見の築城、朝鮮出兵と、華美好きに任せて莫大な費用を使つたやうに見えてゐて、少しも金には困らなかつた。大坂城が陥るまで、秀吉が蓄へ置いた金銀は、家康を怖れさせたといふのである。
家康は、あれほど質素倹約を旨とし、金銀の貯蓄に努めながら、彼の死後四十年で早くも財政の窮乏に苦しんでゐるのである。だから、秀吉の天下は、制度や法令の力ではなくて、財政の力で支へられてゐたと言へる。しかも、その有力なる財源は、外国貿易に依つたのである。
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【教育の事】
今前条に示したる家内に返りてこれを論ぜん。この家内の有様は外を以て内を制し、公を以て私を束縛するものなり。主人の常言に家内安全を主とし質素正直を旨とするはすこぶる有力なる教えにして、然もこの教えは、世間道徳の門においても常に喋々して人心に浸潤したるものなれば、これを一般の国教というも妨げあることなし。然るに今この家においては斯る盛大なる国教もその力を伸ぶること能わずして、戸外の公務なるものに逢えば忽ちその鋒を挫き、質素倹約も顧みるに
遑あらず、飲酒不養生も論ずるに余地なく、一家内の安全は挙げてこれを公務に捧げ、遂には人間最大一の心得たる真実正直の旨をも欠くことなきにあらず。この家の内に養われてこの事情を目撃する子供にして、果たして何らの習慣を成すべきや。家内安全を保護する道徳の教えも、貴重は則ち貴重なれども、更に貴重なる公務には叶わぬものなりとて、既に公務に対して卑屈の習慣を養成し、次いで年齢に及びて人間社会の一人となり、戸外公共の事務を取扱うの身分となれば、生来の習慣忽ち活動し、公は以て私を束縛すべきものなりとて憚る所なきは必然の勢いならずや。
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【西航日録】
スコットランド高地の状態は、英国と大いにその趣を異にし、ドイツあるいはロシアの風に似たるところあり、またアイルランドに類するところあり。民家は多く茅屋草舎にして一階なり、床を張らずして土間なり。その戸口に四尺五、六寸の家あり。天井低くして窓口狭し。食事は三回ともにポリッジ(麦粥)を用うという。しかれども、アイルランドのごとく貧なるにあらず、大いに質素倹約の風あり。児童ははだしなるもの多きも、アイルランドのごとくはなはだしからず。
二十九日、午前九時インバネスを発し、途上、大英国第一の高峰たるベンネビス(Ben Nevis)峰を右方に望む。その高さ四千四百六フィートなり。
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【夏蚕時】
お巣掻きが一片附いた。おときはさう云って腰をのばした。光線の入らぬ土蔵の中は真夏でも案外涼しかった。志津はお茶を入れる為炉端で火を焚きつけた。穢く汚れた炉端の蓆におときは坐った。
壁に一枚紙片が貼られてある。
森田区婦人会申合
一、現今不況に際しお互ひに出来る丈 質素倹約を守りませう
一、お茶菓子廃止、その他冗費は一切はぶき自給自足でゆきませう
一、麦・蕎麦・栗・豆・大根の副食物を多く食べ、なるべく米を浮かす工夫をしませう
それは主婦の責任であります
一、したがって、畠仕事に精だし間作を怠らぬやうにしませう
一、毎月米五合、雑巾一枚づつ集めて貯金組合を作りませう
どちらか一方へは必ず加入すること
雑巾は縦一尺、横八寸、糸は二重糸にて刺すこと
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【新釈諸国噺】
「夢のお告げなんて、あてになるものじゃありません。そのうちに、藤綱の首を斬れというお告げがあったら、あなたはどうします。きっと私を斬る気でしょう。」と妙な理窟を言って、加俸を断った。慾の無い人である。給料があまったら、それを近所の貧乏な人たちに全部わけてやってしまう。だから近所の貧乏人たちは、なまけてばかりいて、鯛の塩焼などを食べているくらいであった。決して吝嗇な人ではないのである。国のために質素倹約を率先
躬行していたわけなのである。主人の時頼というひともまた、その母の松下禅尼から障子の切り張りを教えられて育っただけの事はあって、酒のさかなは味噌ときめているほど、なかなか、しまつのいいひとであったから、この主従二人は気が合った。そもそもこの青砥左衛門尉藤綱を抜擢して引付衆にしてやったのは、時頼である。
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【私の小売商道】
それゆえ昔から数代続いて繁栄の少しも衰えぬ家というのは、よほど代々の遺訓に力強いものがあり、そういう家の家憲を見ると、必ずそこには質素を第一とし、固く奢侈を戒めてある。子孫がこの家憲を守る家は長く栄え、守らぬ家は破滅する。それゆえ主人は相当に成功した後も自ら質素倹約の範を示して、家風を奢侈に委ねぬよう努力を尽し、順境において成人する子孫に充分の活力を保たせてやらねばならぬのであって、これが出来ねば自分一代は成功しても、主人学を完成したものとは言えぬのであります。
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【法然行伝】
その後加茂の川原や、小松殿、勝尾寺、大谷など、その住所は改まるとも勧化怠りなく遂に末法相応浄土念仏が四海のうちに溢るるに至った。
東山大谷は法然上人往生の地である。その跡というのは東西三丈余、南北十丈ばかり、その中に立てられた坊舎であるから、その構えの程も大抵想像がつく。如何に質素倹約のものであったか思いやられて尊い。今の
御影堂の跡がそれである。
法然が或時云う。
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Last updated : 2024/06/28