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焦心苦慮
しょうしんくりょ
作家
作品

泉鏡花

【卵塔場の天女】

しかるにしかる処、何が何とあろうとも明日みょうにちの演能に、今夜までおいでのない法は断じてない、ただ捜せ、捜すとめて、当地第一の料亭、某楼に、橘八郎先生歓迎の席を設けて、縉紳しんしん貴夫人、あまた、かつは主だったる有志はじめ、ワキツレ囃子方はやしかたまで打揃い、最早着席罷在まかりある次第――開会は五時と申すに、既に八時を過ぎました。幹事連の焦心苦慮 ひとえに御賢察願いたい。辛うじて御当家、お内儀、御新造と連立って、公園から、もみじ見物――
 という、そのお悦さんは、世話狂言の町家まちやの女房という風で、暖簾のれんを隔てに、細い格子に立ってのぞいている。

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近松秋江

【霜凍る宵】

「三野村さんはあってもお園さんは、あんたはんも好きやった。三野村さんの死んだあとは、あんたはんのところに行く気やったのどすやろ」と一口いったことを思ってみても、女の底意は察することが出来るのである。私は、それを思うにつけても、毎度近松の作をいうようであるが、「冥途めいど飛脚ひきゃく」の中で、竹本の浄瑠璃じょうるりうたう、あの傾城けいせいに真実なしと世の人の申せどもそれは皆僻言ひがごと、わけ知らずの言葉ぞや、……とかく恋路にはいつわりもなし、誠もなし、ただ縁のあるのが誠ぞやという、思うにまかせぬ恋の悲しみの真理を語っている一くさりを思い合わせてふっとした行きちがいから、何年にも続いて、自分の魂を打ち込んで焦心苦慮したことがまるで水の泡になってしまったことを なげいてもなげいても足りないで私はひとり胸の中で天道を怨みかこつ心になっていた。

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  • それぞれの四字熟語の詳しい意味などは、辞典や専門書でお確かめください。
  • このサイトの制作時点では、三省堂の『新明解 四字熟語辞典』が、前版の5,600語を凌ぐ6,500語を収録し、出版社によれば『類書中最大。よく使われる四字熟語は区別して掲示。簡潔な「意味」、詳しい「補説」「故事」で、意味と用法を明解に解説。豊富に収録した著名作家の「用例」で、生きた使い方を体感。「類義語」「対義語」を多数掲示して、広がりと奥行きを実感』などとしています。

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Last updated : 2024/06/28