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酒池肉林
しゅちにくりん
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作家
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作品
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【人間失格】
十一月の末、自分は、堀木と神田の屋台で安酒を飲み、この悪友は、その屋台を出てからも、さらにどこかで飲もうと主張し、もう自分たちにはお金が無いのに、それでも、飲もう、飲もうよ、とねばるのです。その時、自分は、酔って大胆になっているからでもありましたが、
「よし、そんなら、夢の国に連れて行く。おどろくな、酒池肉林という、……」
「カフエか?」
「そう」
「行こう!」
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【現代忍術伝】
こういうドサクサ時代というものには、没落階級はつきもので、変化に応じて身を変えられる、青年の天下であり、甲羅ができて身を変えられぬ老人共はクリゴトを述べるばかりで、ウダツがあがらぬ習いである。
現代とても同じこと、法治国、文明開化のオカゲによって一応の秩序は保たれているように見えるが、裏へまわれば、裏口営業もあるし、巡査はボスの手先をつとめ、税吏は酒池肉林の楽しみをつくす。地頭や代官、岡ッ引と変らない。大名会議の席上、大名の一人が前をまくってジャア/\やったり、男大名が酔っ払って女大名を口説いた。
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【将来の日本】
鈎を窃む者は誅、国を窃む者は侯、侯の門仁義存す。いかにその食は一羹一菜に限り、その服は綿衣に限るもその結果はただ生活の不愉快を感ずるのみ。その倹約我においてなんの利益かある。いかに酒池肉林・流連荒亡の楽しみをなすもただ生活の愉快を感ずるのみ。その驕奢我においてなんの損害かある。それ一方においては無限の権利者たらしめ、一方においては無限の義務者たらしめ、しかしてその主人に責むるにその奴隷を善待すべきをもってす。あにまた愚ならずや。
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【自警録】
「八百膳」の料理を奢られても、三日続けて食わさるれば、不足を訴える。帝国ホテルの御馳走でも、たび重なればいやになる。食物だけのことを望めば、人間はいかなる酒池肉林
に入れても永く満足はせぬものである。
人間には絶対的幸福はけっして得られるものでない。また得られぬはずのものである。
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【日本男子論】
然り而して日本国中その責に任ずる者は誰ぞや、内行を慎まざる軽薄男子あるのみ。この一点より考うれば、外国人の見る目如何などとて、その来訪のときに家内の体裁を取り繕い、あるいは外にして都鄙の外観を飾り、または交際の法に華美を装うが如き、誠に無益の沙汰にして、軽侮を来す所以の大本をば擱き、徒に末に走りて労するものというべきのみ。これを喩えば、大廈高楼の盛宴に山海の珍味を列ね、酒池肉林
の豪、糸竹管絃の興、善尽し美尽して客を饗応するその中に、主人は独り袒裼裸体なるが如し。客たる者は礼の厚きを以てこの家に重きを置くべきや。饗礼は鄭重にして謝すべきに似たれども、何分にも主人の身こそ気の毒なる有様なれば、賓主の礼儀において陽に発言せざるも、陰に冷笑して軽侮の念を生ずることならん。
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【勝川花菊の一生】
ある時、急に社会が外面的に欧化心酔した。それは明治十八年頃のいわゆる鹿鳴館時代で、晩年にはあんなゴチゴチの国粋論者、山県元帥でさえ徹宵ダンスをしたり、鎗踊りをしたという、酒池肉林
、狂舞の時期があった。吉原大籬の遊女もボンネットをかぶり、十八世紀風のひだの多い洋服を着て椅子に凭りかかって張店をしたのを、見に連れてゆかれたのを、私はかすかに覚えている。
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【奇談クラブ〔戦後版〕 暴君の死】
阿武隈大膳正もその数には漏れず、お金の方という凄いお部屋様を蓄えました。二十三という良い年増で、曾ては「ありんす国」の水も呑んだ強か者。洗い髪か何んかで、椎茸髱の小母さん方を睨め廻しながら、長局で、八文字を踏む人柄ですが、それが退屈と慢心で毎日の生活を持て余している大膳正を、どんな具合に教育したかは大方想像の出来ることであります。
三年目にはもう名君振りの偽装をかなぐり捨てて、歌舞音曲と酒池肉林の生活に
沈湎して居りました。お金の方の指南で、大膳正は何時の間にやら、曾ての柳原式部正の徳川宗春のような、通人大名になりすましていたのです。
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【丹下左膳 乾雲坤竜の巻】
杯盤狼藉酒池肉林
――というほどの馳走でもないが、沢庵の輪切りにくさやを肴に、時ならぬ夜ざかもりがはずんで、ここ離庵の左膳の居間には、左膳、源十郎、仙之助に与吉。
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【痩身記】
わたし達はその時、そこで別れる筈だつたのを更に脚を伸ばして、宿場の三徳といふ家へ向つた。わたしが酔つて来ると、彼はいくらでも酔つた方が好いとすゝめながら、君が大いに金を儲けて酒池肉林の快楽に耽るところを見物したい――といふ意味などを冗談さうに云ふ程寛いだ。そして彼は、わたしの酔態をいたはるやうに眺めてゐたが、それから四五日たつて訪れて来ると、いきなり、先日酒池肉林云々と云つたことは改めてとり消す、あの時は何か左ういふ華やかなことでも希つてやりたいやうな不満と慊らなさを思つたので、うつかりと不平などを込めて云つたのであつたが、凡そ君には不適当な――自分の過言だつたから! と自身をたしなめるやうな眼で云ひ直した。
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【三国志 臣道の巻】
「君子は退屈を知らずとか聞いておるが」
「嘘をいえ。退屈を知らん奴は、神経衰弱にかかっておる証拠だ。ほんとうに健康なら退屈を感じるのが自然である」
「では一夕、宴をもうけて、学人の退屈をおなぐさめいたそう」
「酒宴は真っ平だ。貴公らの眼や口には、酒池肉林
が馳走に見えるか知らんが、わしの眼から見るとまるで芥溜めを囲んで野犬がさわいでいるような気がする。そんな所へすえられて、わしを肴に飲まれてたまるものか」
「否、否。……きょうはそんな儀式張らないで二人きりで飲りましょう。あとでお越し下さい」
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Last updated : 2024/06/28