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終始一貫
しゅうしいっかん
作家
作品

芥川龍之介

【LOS CAPRICHOS】
 第一の幽霊  なんだつてあんなに慌てたのだらう?
 第二の幽霊 慌てる筈さ。まあ、これを聞[#「聞」は底本では「闇」]き給へ。[#底本ではここで改行、次行の始めかぎ括弧は天ツキ]「何となれば彼は終始一貫芥川竜之介あくたがはりゆうのすけの小説が出ると、勇ましい悪口あくこうを云ひ続けた。……」
 第一の幽霊 (笑ふ。)そんな事だらうと思つたよ。

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梶井基次郎

【詩集『戰爭』】

 人々は「意志」の北川冬彦を理解しなければならない。この鍵がなくては遂に彼を理解することは出來ないであらう。
 彼は「短詩運動」「新散文詩運動」を勝利にまで戰ひ通して來た。終始一貫して。新しい詩壇は今やその面目を一新してゐる。韻文は破壞された。韻文的なもの――古臭い情緒――は姿を消して、新しいエスプリが隨所に起つた。

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木村荘八

【東京の風俗 序】

 この本には最近はつい今しがた書きたてのものから、最も古くは――例へば「浴衣」(大正十三年)のものまでが採録されてゐますが、著者としての立場なり、考へには別段大変化はありません。終始一貫して私は東京を愛します。「愛します」とその相手のモノを自分から離していはうよりも、終始一貫、このさなかにゐますので、東京を描いて、私には呼吸いきのつけるところはない。

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小村雪岱

【泉鏡花先生のこと】

即ち人や世間に対しても、先生自身の一つの動かし難い個性というか、何かしら強味を持っておられた人で、天才肌の芸術家という一つの雰囲気で、すべてをおおっておられました。その点偏狭とも見られるところもありましたが、妥協の出来ない人でした。しかしその故にこそ、文壇生活四十余年の間、終始一貫いわゆる鏡花調文学で押し通すことの出来たわけでもあり、文壇の時流から超然として、吾関せず えんの態度を堅持し得られたものと思われます。

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中島敦

【光と風と夢】

「うすっぺら」で、「不誠実」で、「好色漢」で、「自惚うぬぼれや」で、「がりがりの利己主義者」で、「鼻持のならぬ気取りや」の彼が、この書くという一筋の道に於てのみは、終始一貫、修道僧の如き 敬虔けいけんな精進を怠らなかった。彼は殆ど一日としてものを書かずには過ごせなかった。それは最早肉体的な習慣の一部だった。

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宮本百合子

【文学の大衆化論について】

 人間性というものの理解についても、現在のような社会事情の錯綜の裡にあっては、様々の複雑な混乱がおこっている。現状に対する唯々諾々的態度、その出処進退に終始一貫した人間としての責任感がないことまで、その作家がもっている高い素直さ、人間性という評価をうける甘いホロリズムさえ、いつの間にか這い込んで来ていないことはない。人間性の問題はプロレタリア文学の歴史の上では、いくつかの段階を経て、今日では人間性諸相の、社会関係との綜合的描写の理解へすすみつつある。

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久保栄

【熱情の人】

明治、大正、昭和の三つのジェネレエションにわたって、真砂座から築地小劇場にいたる劇壇生活の長い道程を、この詩人的な熱情がひと筋に貫いていると言っても過言ではない。一部の人の言うごとく、先生の性情が、ある場合、熱しやすいとともに醒めやすいという一面を伴ったことは否みがたいが、しかし日本劇壇のよき未来のために粉骨砕身する根本の精神においては、終始一貫して変るところがなかったのである。

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尾崎士郎

【土俵の夢】

今日の視野に映ずる土俵の現実だけをきりはなして相撲の動きを把握することは絶対に不可能なことと言わねばならぬ。今日、唯一の相撲通であるともいわるべき彦山光三君なぞが終始一貫して生活の情熱を土俵に託していることのできるのは、もちろん、彼の批評眼の天稟にして卓越することと並んで相撲に対する愛情のふかさによることはもちろんであるが、しかし、それにも増して重要なことは、一日たりとも土俵の微妙なる動きを見逃がすことなく土俵の永遠につながる今日を生活しているということではあるまいか。

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Last updated : 2024/06/28