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多事多難
たじたなん
作家
作品

木下尚江

【火の柱】

多事多難なりける明治三十六年も今日に尽きて、今は其の夜にさへなりにけり、寺々には百八煩悩の鐘鳴り響き、各教会には 除夜ぢよや集会あつまり開かる、

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坂口安吾

【ジロリの女 ――ゴロー三船とマゴコロの手記――】

金龍と私との十年の歳月は多事多難であったが、又、夢のようにも、すぎ去った。私は多情多恨であり、思い屈し、千々に乱れて、その十年をすごしはしたが、なにか切実ではなかったような思いがする。

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牧野富太郎

【植物記】

ダガ、昨日まで暖飽な生活をして来た私がにわかに毎月十五円とは、これには弱った。何分足りない、足りなきゃ借金が出来る。それから段々子供が生れだし、驚くなかれ後には遂に十三人に及んだ。そして割合に給料が上らない。サア事ダ、私の多事多難はここからスタートして、それからが波瀾重畳、 つぶさに辛酸を嘗めた幾十年を大学で過ごした。その間また断えず主任教授の理不尽な圧迫が学閥なき私に加えられたので、今日その当時を回想すると面白かったとは冗戯半分言えない事も無いでは無いが、しかし誠に閉口した。

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種田山頭火

【其中日記 (十一)】

 十月十六日 時雨。

けふもつゝましく。――
かへりみると、八月九月はきわめて多事多難だつた、自分で自分を殺すやうな日夜がつゞいた、そして死にもしないで、私はこの境地まで来た。……
身辺整理、何もかもかたづけて――まだ屋根と野菜畑とはかたづかないが――ほつとする、おちついてゆつたりした気持である。

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中里介山

【大菩薩峠 京の夢おう坂の夢の巻】

いまさら駒井がその後塵を拝して、前人のすでに功を成したその余沢にありつこうなどの依頼心はないにきまっている。いわばこれを一時の 梅花心易ばいかしんえきに求めて、当座の行動の辻占に供したに過ぎまいと言うべきですから、従って、針路こそ南に転向ときまったけれども、目的がきまったわけではない。内外共にいまだ解決せざる問題が充ち満ちている。
 前途に倍加する多事多難を予想せずにはいられますまい。

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吉川英治

【山浦清麿】

 象山は、聞くと、
『ほう、江戸へか。さては、遊学かな。いい事じゃ。若い者はどしどしと、中央へ行って、日本が今、世界の中でどう動いているか、又いかに我が国が今――又将来、多事多難な時代の潮に向いかけておるか。そういう事にも、 とくと、眼をひらいて来なければいかん。餞別はなむけいたそう』
 と、矢立から筆を出して、自身の扇子へ、さらさらと、一桜花さくらと、一首の歌を書いてくれた。

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  • それぞれの四字熟語の詳しい意味などは、辞典や専門書でお確かめください。
  • このサイトの制作時点では、三省堂の『新明解 四字熟語辞典』が、前版の5,600語を凌ぐ6,500語を収録し、出版社によれば『類書中最大。よく使われる四字熟語は区別して掲示。簡潔な「意味」、詳しい「補説」「故事」で、意味と用法を明解に解説。豊富に収録した著名作家の「用例」で、生きた使い方を体感。「類義語」「対義語」を多数掲示して、広がりと奥行きを実感』などとしています。

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Last updated : 2024/06/28