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多岐多端
たきたたん
作家
作品

芥川龍之介

【文芸的な、余りに文芸的な】

「アララギ」の父正岡子規が「明星」の子北原白秋と僕等の散文を作り上げる上に力を合せたのも好対照である。)が、これは必しも「新詩社」にばかりあつたことではない。斎藤茂吉氏は「赤光しやくくわう」の中に「死に給ふ母」、「おひろ」等の連作を発表した。のみならず又十何年か前に石川啄木の残して行つた仕事を――或は所謂いはゆる「生活派」の歌を今もなほ着々と完成してゐる。元来斎藤茂吉氏の仕事ほど、多岐多端に渡つてゐるものはない。同氏の歌集は一首ごとに 倭琴わごんやセロや三味線や工場の汽笛を鳴り渡らせてゐる。

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芥川龍之介

【合理的、同時に多量の人間味 ――相互印象・菊池氏――】

今まで話したような事柄から菊池には、菊池の境涯がちゃんと出来上がっているという気がする。そうして、その境涯は、可也僕には羨ましい境涯である。若し、多岐多端の現代に純一に近い生活を楽しんでいる作家があるとしたら、それは詠嘆的に自然や人生を眺めている一部の詩人的作家よりも、寧ろ、菊池なぞではないかと思う。

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坂口安吾

【散る日本】

私は碁の大手合は時々見たが、間髪を入れず、といふのはメッタにない。碁の定石じょうせきは極めて不定多岐多端だが、将棋の定跡はある点まで絶対のものらしい。然し終盤に及んでからも、四五手間髪を入れず応酬し合つた時があつた。

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坂口安吾

【我が人生観 (七)芥川賞殺人犯人】

しかし、現世は、コントンとして、多岐多端。なにも大文学者だけが文士でなければならぬという厳正にして面倒なところではあるまい。

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長塚節

【教師】

教育者としては佐治君と意見の交換もしなければならぬ。それ以上は僣越だ。自分は何故に理化學を選んだ。學資の缺乏から早く專門に向はなければならぬ事情もあつたのだけれど、空を論ずることが多岐多端に流れて單純な自分の性情が到底それに堪へることも出來ず、又それを好まなかつたからである。

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岸田國士

【近代劇論】

それはつまり、演劇革新の名によつて、様々な非演劇的要素を舞台に横行せしめた結果、遂に演劇本来の面目を失はうとする傾向を生じたからで、「演劇をして再び演劇たらしめよ」といふ叫びは、要するに、「演劇の本質を正しく認識せよ」といふ警告に外ならず、近代劇の多岐多端な流れは、この一標識に辿りついて、初めて、演劇の伝統といふ問題を取上げたのである。

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Last updated : 2024/06/28