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知行一致
ちこういっち
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作家
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作品
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森鴎外
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【
余興
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天下に一人のそれを理解してくれる人がなくたって、己はそれに安んじなくてはならない。それに安んじて恬然としていなくてはならない。それが出来ぬとしたら、己はどうなるだろう。独りで煩悶するか。そして発狂するか。額を石壁に打ち附けるように、人に向かって説くか。救世軍の伝道者のように辻に立って叫ぶか。馬鹿な。己は幼穉だ。己にはなんの修養もない。己はあの床の間の前にすわって、愉快に酒を飲んでいる。真率な、無邪気な、そして公々然とその愛するところのものを愛し、知行一致の境界に住している人には、
逈に劣っている。己はこの己に酌をしてくれる芸者にも劣っている」
こう思いつつ、頭を挙げて前を見れば、もう若い芸者はいなかった。それに気が附くと同時に、私は少し離れた所から鼠頭魚が私を見ているのに気が附いた。鼠頭魚は私の前に来て、じっと私を見た。
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小金井喜美子
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【
鴎外の思い出
】
次の手紙も母宛ですが、私のために書かれた一節があるので写して置きました。
お君さんの安心立命の出来ぬは 矢張倫理とか宗教とかの本を読まぬ為めと存候。福岡にて買ひし本の内に『伝習録』といふものあり。有触れたる者なれど、まだ蔵書に無き故買ひおき候。これは 王陽明の弟子が師の 詞を書き取りしものなるが、なか/\おもしろき事 有之候。中にも、 知行一致といふこと反復して説きあり、常の人は忠とか孝とかいふものを先づ智恵にて知り、
扨実地に行ふとおもへり。知ると行ふとは前後ありとおもへり。 是れ大間違なり。譬へば飯といふものを知るが先にて、 扨
後に食ふとおもふ如し。実は食はんと欲する心が先づありて飯といふものも生じ、食ふといふ行は初めの食はんと欲する心より直ちに出で来るなり。忠も孝も前後などは無しとの説なり。
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Last updated : 2024/06/28