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雲散霧消
うんさんむしょう |
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作家
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作品
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坂口安吾 |
【勉強記】
天日ためにくらし、とはこの時のことで、良く晴れた日を選んで出ても、道中は実にくらく、せつなかった。けれども流石に高僧たちは、按吉のような書生にも、大概気楽に会ってくれたし、会ってみれば、実に気軽にうちとけて、道中の不安などは雲散霧消が常だった。そうして、各の高僧達は、各の悟りの法悦をきかせてくれた。
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坂口安吾 |
【ヒンセザレバドンス】
電報為替が鳥のやうに飛んできた。私は葛巻の返事がとゞいて、それを金に代へるために郵便局まで歩くことがいつたい出来るのだらうかと不安であつたが、為替がとゞくと、そんな不安は雲散霧消であつた。みる/\全身に元気みちわたり、私は為替を握つて外へでた。
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太宰治 |
【八十八夜】
しばらく、口あいて八が岳を見上げていて、そのうちに笠井さんも、どうやら自身のだらけ加減に気がついた様子で、独(ひと)りで、くるしく笑い出した。がりがり後頭部を掻(か)きながら、なんたることだ、日頃の重苦しさを、一挙に雲散霧消させたくて、何か悪事を、死ぬほど強烈なロマンチシズムを、と喘(あ)えぎつつ、あこがれ求めて旅に出た。山を見に来たのでは、あるまい。ばかばかしい。とんだロマンスだ。
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太宰治 |
【パンドラの匣】
賢明な君の事だから、すでにお気づきの事と思いますが、どうか、これからは、詩の修行はもとより、何につけても、君の新しい男としての真の面目を見せて下さるよう、お願いします。なんて、妙に思いあがった、先輩ぶった言い方をしましたが、なに、竹さんなんかの事は気にするな、というだけの事なんだ。勇気を出して、当道場を訪問して、竹さんをひとめ見るといい。現物を見ると、君の幻想は、たちまち雲散霧消する。何せもうただ立派で、そうして大鯛(おおだい)なんだからね。
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海野十三 |
【什器破壊業事件】
つまりそれは、帆村探偵から頼まれて、なにかの事件解決のためやっていることゆえ、国策に背馳するものだとはいえない安心があった。すなわち、がちゃーんの音を聞く瞬間、光枝の胸の中に鬱積(うっせき)した不満感といったようなものが、一時的ではあったが、たちまち雲散霧消(うんさんむしょう)してしまうのを感じたことであった。
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久生十蘭 |
【顎十郎捕物帳 遠島船】
顎十郎は、例によってぼんやりとした顔つきで、「これでなにもかにもわかったから、この事件のアヤをほぐして見ようか。……おれが最初、三崎丸の話を聴いたとき、二十三人もの人間が海の上で雲散霧消するなんてことはあるべきいわれがないと思った。 |
小栗虫太郎 |
【潜航艇「鷹の城」】
「儂(わし)は、王立(ロイヤル)カリンティアン快走艇(ヨット)倶楽部(くらぶ)員の一人として、かつてフォン・エッセン男爵に面接の栄を得たものでありますが、儂ですらも、これまではさまざまな浮説に惑わされ、艇長の死を容易に信ずることができなかったのでした。それが、今や雲散霧消したことは、なにより墺太利(オーストリヤ)海軍建設以来最初の英雄であるところの、フォン・エッセン閣下のため祝福さるべきであろうと信じます。 |
中里介山 |
【大菩薩峠 めいろの巻】
主膳といえども、この頃は、手持無沙汰に堪えられないものがあるのであります。「黄金多からざれば、交わり深からず」といった頼もしい連中は、多少の黄金を振りまいている間は集まって来るが、その水の手が切れれば、雲散霧消することは今にはじめず、外へ遊びに出るにはこの額の傷が承知しないし、よし額の傷が承知しても、どこへ遊びに行こうという興味も起らないのは、すでに世の遊びなるものを仕尽しているからであります。
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