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和洋折衷
わようせっちゅう
作家
作品

森鴎外

【鼠坂】

音羽の通まで牛車で運んで来て、鼠坂のそばへ足場を掛けたり、汽船に荷物を載せる Craneクレエヌ と云うものに似た器械を据え附けたりして、り上げるのである。職人が大勢這入はいる。大工は木を削る。石屋は石を切る。二箇月立つか立たないうちに、和洋折衷とか云うような、二階家が建築せられる。黒塗の高塀が めぐらされる。とうとう立派な邸宅が出来上がった。

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島崎藤村

【夜明け前 第二部上】

しかし、神戸こうべ村の東の寂しく荒れはてた海浜に新しい運上所うんじょうしょが建てられ、それが和洋折衷の建築であり、ガラス板でもって張った窓々が日をうけて反射するたびに輝きを放つ「びいどろの家」であるというだけでも、土地の人々をよろこばせた。

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徳冨蘆花

【小説 不如帰】

 武男が母は昔気質かたぎの、どちらかといえば西洋ぎらいの方なれば、寝台ねだいねてさじもて食らうこと思いも寄らねど、さすがに若主人のみは幾分か治外の法権をけて、十畳のその居間は和洋折衷とも言いつべく、畳の上に緑色の 絨氈じゅうたんを敷き、テーブルに椅子いす二三脚、床には唐画とうがの山水をかけたれど、

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岸田國士

【大正風俗考】

 和洋折衷といふやうなことがどこまでうまく行くか、わたしは知らないが、わが国の新しい生活様式が、どうせさういふ処へ落ちつくのだらうと思つてゐる。

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岡本かの子

【老妓抄】

 彼女が自分の母屋おもや和洋折衷風に改築して、電化装置にしたのは、彼女が職業先の料亭のそれを見て来て、負けず嫌いからの思い立ちに違いないが、設備して見て、彼女はこの文明の利器が現す働きには、健康的で神秘なものを感ずるのだった。

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木下杢太郎

【海郷風物記】

而して彼等の色彩に對する要求は之を以つて滿足せずに、汽船宿の搏風を赤く塗り、和洋折衷の鰹船の舷を群青で飾るのである。

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渡辺温

【或る母の話】

 浅原は、智子の腕をつかんで階段をかけ上った。二階の廊下へ出ると、はげしいガスの匂が鼻をついた。そして寝室の扉には鍵が卸りていた。(――まことにお誂え向きにも、郊外風の割にガッシリした和洋折衷の建築だったのである。)

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豊島与志雄

【傷痕の背景】

 バラックとも云ってよいほどの、粗末なアパートの、和洋折衷の室である。四角な区劃、それが、入口の控室で切取れ、押入で切取られ、下が三尺の戸棚になってる床あきで凹み、奥の室に通ずる襖、硝子戸の六尺の窓……。

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矢田津世子

【茶粥の記】

 姑の髪はむずかしかった。びんたぼをチョッペリと出して、てっぺんに出来合いの小さなマゲをのせるのだったが、この和洋折衷のハイカラ髪は清子が嫁いで来てからの慣わしだった。

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宮本百合子

【農村】

 町のステーションから、軒の低い町筋をすぎて、両方が田畑になってからの道は小半里、つきあたりに、有るかなしの、あまり見だてもない村役場は建って居る。和洋折衷の三階建で、役場と云うよりは「三階」と云う方が分りやすい。

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夢野久作

【超人鬚野博士】

 その混凝土コンクリート氏こと、山木やまき勘九郎氏邸の前を通ると、鬱蒼うっそうたるかしの木立の奥に、青空の光りを含んだ八手やつでの葉が重なり合って覗いている。その向うにゴチック式の毒々しい色硝子ガラスめ込んだ和洋折衷の玄関が、贅沢にも真昼さなかから電燈を けて覗いているもう一つ向うに、コンクリートの堂々たる西洋館がそびえているところを見ると、如何にも容易ならぬ金持らしい。

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岡本綺堂

【米国の松王劇】

プログラムを観ると第三が松王で、それが今度の呼物であるということが判りました。この松王は欧洲でも上場されたことがあり、米国では紐育ニューヨークではじめて上場されたのですが、その演出法が和洋折衷で面白くないというので不評であったそうです。

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Last updated : 2024/06/28