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野心満満/野心満々
やしんまんまん
作家
作品

芥川龍之介

【木曾義仲論(東京府立第三中学校学友会誌)】

寿永の革命はかくして彼が凱歌の下に其局を結びたり。然りと雖も、彼と頼朝とが、相応呼して、猟し得たる中原の鹿は、果して何人の手中にか落ちむとする。 若し彼にして之を得む乎、野心満々たる源家の呉児にして焉ぞ、手を袖にして、傍観せむや。若し頼朝にして之を得む乎、固より火の如き血性の彼の黙して止む べきにあらず。

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下村湖人

【次郎物語 第四部】

零点はさすがに一つもなかった。備考欄には、「品性下劣、御殿女中の如し」とか、「駈落かけおち三 回心中未遂一回」とか、「野心満々、惜しむらくは低能」とか、「彼いつの日にか悔い改めん」とか、「愚鈍なるが如くにして、最も警戒を要す」とか、そう いったさまざまの文句が、いっぱい書きつめてあった。五点の評点をもらったのは「あざらし」先生だったが、その備考欄には「性粗野にして稚気あり、陰険と は認めがたし、合否の判定は後日会議の結果にまつ」とあった。

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内田魯庵

【犬物語】

 其通りだよ。嬢様の撰択おみたてに預からうといふ野心満々たる面々は何れも愚劣極まつた鼻持ならぬ連中だ。君達も及ばぬ恋の滝登りに首尾よく及第しやうといふ僥倖党げうかうたうだから断念あきらめめ話して聞かせやう。

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小熊秀雄

【小熊秀雄全集-13 詩集(12)その他の詩篇】

小山いと子

原稿、二百枚も朝飯前、
近頃の野心満々たることよ、
足まめ、手まめに
調べた小説
行つたこともないところも
見たやうにくはしく書いてしまふ、
調べてばかりゐる女検事から
早く女弁護士におなりなさい

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宮本百合子

【自然描写における社会性について】

何故ならば、十九世紀中葉までの過去の社会で、文学をつくり、文学を愛好する人々の層は、いわゆる中流以上の有識人の間に限られていた。有識人たちの日暮しは、直接自分の肉体で自然と取組みもしないし、野心満々たる企業家でもなかった。一種の批評家として、あるいは当時の支配的社会勢力の理論化のための活動家としての役割である。

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中里介山

【大菩薩峠 Ocean の巻】

 ただ三成は、せても枯れても、豊太閤の智嚢であり、佐和山二十五万石の大名であったのに、小栗は僅かに二千八百石の旗本に過ぎないことと、三成は野心満々の投機者であって、あわよくば太閤の故智を襲わんとしているのに、小栗は、輪廓において、忠実なる徳川家の譜代ふだいであり、譜代であるがゆえに、徳川家のためにはかって、且つ、日本の将来をもその手によって打開しようとした実際家に過ぎません。

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夢野久作

【鼻の表現】

 一方シーザーは、羅馬に於てブルタスの刃に刺されました。これはその鼻の野心満々たる表現が、らず識らずの裡に民衆の反感を買っていたのではないかと想像する事が出来るのであります。

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Last updated : 2024/06/28