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余裕綽綽/余裕綽々
よゆうしゃくしゃく |
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作家
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作品
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坂口安吾 |
【安吾巷談 湯の町エレジー】
思うに、この先生は、ほかの泥棒のように、セッパつまった稼ぎ方はしていなかったのである。主として芸者をつれて豪遊し、そうすることによって容疑をまぬがれ、当分の遊興費には事欠かないが、ちょッとまア、食後の運動に、趣味を行う、という程度の余裕綽々たるものであった。
「バルザックの武者ブリは、当代の文士の生活にはその片鱗も見られないね。たまたま温泉荒しの先生の余裕綽々たる仕事ぶりに、豪華な制作意欲がうかがわれるだけだ。芸道地に墜ちたり矣」 |
豊島与志雄 |
【都会に於ける中流婦人の生活】
良人と共に仕事をし共に思考してるという意識を持つとき、そして実際にそういう生き方をする時、女の家庭生活にも初めて、一定の方向――目的――が生じてくる。広々とした眼界が開けてくる。精神的に窒息しないだけの、充分の空気と光とがさし込んでくる。そして生活に張りと力とが生じてくる。張りのある力強い生活さえしていれば、吾が中流の婦人にとっては、家政や育児の業は比較的容易になし遂げられて、なお余裕綽々たるものがあるだろう。
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田中英光 |
【さようなら】
いつもの優勝者、剣道二段で陸上競技部の主将をしている伊沢の代りに、小身痩躯の井上が、予想を裏切り、学校の記録を破るスピィディな余裕綽々(しゃくしゃく)の走り方で先頭に立ち、帰ってきた。白いランニングの胸を張り、軽快に白足袋(しろたび)を走らせ、熱いものでも吹くような工夫された規則的な息使い。
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国枝史郎 |
【八ヶ嶽の魔神】
「それ行くぞ」と多四郎は嘲けりながら飛び廻った。彼は余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)たるもので、右から襲い左から飛びかかりグルリと廻って背後から襲う。鼠(ねずみ)を捕えた猫のように最初に致命的の一撃を加え、弱って次第に死ぬのを待ち最後に止(とど)めを差そうとするのだ。 |
海野十三 |
【空襲葬送曲】
「東京警備一般警報第一号、発声者は東京警備参謀塩原大尉!」キビキビした参謀の声が聴えた。帝都二百万の住民は、この一語も、聞き洩(もら)すまいと、呼吸(いき)を詰めた。 「信ずべき筋によれば」参謀の声は、余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)たるものがあった。 |
中里介山 |
【大菩薩峠 流転の巻】
最初の手合せで、しかも江戸に一流の名ある道場の主人公その人を敵に取りながら、その敵を眼中におかず、余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)たるその態度。構え方に一点の隙を見出すことができない。事実、三宅三郎も、今日までにこれほどの名人を見たことがない。心中、甚だ焦(あせ)ることあって、しきりに術を施さんとして、わざと隙を見せるが、先方の泰然自若たること、有るが如く、無きが如く、少しもこっちの手には乗らない。 勝とうと思えばこそ、負けまいと思えばこそ、そこに惨憺(さんたん)たる苦心もあるが、最初から負けようと思ってかかる立合には敵というものがない。しかもその負けることだけに二年有余の修行を積んでいる武芸者というものは、けだし、天下に二人となかろう。余裕綽々たるもその道理である。 |
小熊秀雄 |
【小熊秀雄全集-6 詩集(5)飛ぶ橇】
高い綱の上から諸君をながめながら。観客の中でいちばん美しい娘さんに秋波(ながしめ)した、 私の浮気よ、 余裕綽綽たる私の現実、 小屋がはねて人々は去つた、 舞台の上のアセチリン瓦斯は吹き消され、 巨大な獣の舌のやうな 赤い緞帳がガランとした、 小屋の中に垂れさがつてゐる、 |
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