作 家
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作 品
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作者不詳 国民文庫 (明治44年) |
【義経記】 「早々参りて、大和坊御代官に笛を仕れ」と言はれて、判官仏壇の影の仄暗き所より出で給ひて、少人の末座にぞ居給ひける。大衆「さらば管絃の具足参らせよ」と申しければ、長吏の許より、臭木のこう〔胴〕の琴一張、錦の袋に入れたる琵琶一面取寄せ、琴をば「御客人に」とて、北の方に参らせける。 |
森鷗外 |
【うたかたの記】 我空想はかの少女(おとめ)をラインの岸の巌根(いわね)にをらせて、手に一張(ひとはり)の琴を把(と)らせ、嗚咽(おえつ)の声を出(いだ)させむとおもひ定めにき。 |
直木三十五 |
【鍵屋の辻】 いつでも対手になってやるという覚悟で、勿論鎖帷子、白昼堂々と槍を立てて又五郎は行く。三人に槍三本、鉄砲一挺、半弓一張とちゃんと格式を守って大手を振っているのである。 |
徳田秋声 |
【黴】 そして蚊帳(かや)が一張(ひとはり)しかなかったので、夜おそくまで、蝋燭(ろうそく)の火で壁や襖(ふすま)の蚊を焼き焼きしていた。 |
島崎藤村 |
【藤村詩抄 島崎藤村自選】 傘のうち 二人(ふたり)してさす一張(ひとはり)の |
巌谷小波 |
【こがね丸】 むかし取(とつ)たる杵柄(きねづか)とやら、一束(ひとつか)の矢一張(ひとはり)の弓だに持たさば、彼の黄金丸如きは、事もなく射殺(いころ)してん。 |
佐々木味津三 |
【旗本退屈男 第七話仙台に現れた退屈男】 いぶかっている退屈男の方をじろりじろりと流し目に見眺めながら、矢場主英膳がやがてそこに取り出したのは、それらを引き出物の景物にするらしく、先ず第一に太刀がひと口(ふり)、つづいて小脇差が二腰、飾り巻の弓が三張り、それに南蛮鉄(なんばんてつ)の鉄扇五挺を加えて都合十一品でした。 |