作 家
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作 品
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紫式部 與謝野晶子訳 |
【源氏物語 初音】 舞い人は、「高巾子(こうこじ)」という脱俗的な曲を演じたり、自由な寿詞(じゅし)に滑稽味(こっけいみ)を取り混ぜたりもして、音楽、舞曲としてはたいして価値のないことで役を済ませて、慣例の纏頭(てんとう)である綿を一袋ずつ頭にいただいて帰った。夜がすっかり明けたので、二夫人らは南御殿を去った。源氏はそれからしばらく寝て八時ごろに起きた。 |
織田作之助 |
【六白金星】 楢雄は煙草は刻みを吸ひ、無駄な金は一銭も使ふまいと決めてゐたが、ただ小宮町へ行つた帰りにはいつも天満(てんま)の京阪マーケットでオランダといふ駄菓子を一袋買つてゐた。子供の時から何か口に入れてゐないと、勉強出来なかつたのである。 |
岡本かの子 |
【初夏に座す】 彼は煙草(たばこ)をのむので、私があるとき菊世界という巻莨(まきたばこ)一袋をやると、彼は拝して受取ったが、それを喫(の)まなかった。 |
寺田寅彦 |
【相撲】 それはとにかく、ある時東海道の汽車に乗ったら偶然梅ケ谷と向かい合いの座席を占めた。からだの割合にかわいい手が目についた。みかんをむいて一袋ずつ口へ運び器用に袋の背筋をかみ破ってはきれいに汁を吸うて残りを捨てていた。すっかり感心して、それ以来みかんの食い方だけはこの梅ケ谷のまねをすることにきめてしまった。 |
ジョナサン・スイフト JonathanSwift 原民喜 訳 |
【ガリバー旅行記 ULLIVER'STRAVELS】 私はボートの中に、牛百頭、羊三百頭の肉と、それに相当するパンと飲物を積み込みました。それから四百人のコックの手でとゝのえてくれた肉なども積み込みました。それから、生きた牝牛六頭と牡牛を二頭、それから牝羊六頭と牡羊二頭を、これらは国へ持って帰って、飼ってみようと思いました。船の中で食べさせるために、乾草を一袋と麦を一袋、用意しました。 私はこの国の人間も、十人ばかり、つれて行きたかったのですが、これはどうしても、陛下がお許しになりません。それどころか、私のポケットをすっかり調べられ、たとえ志願する者があっても、人民は決してつれて行かないと誓わされました。 |