作 家
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作 品
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島崎藤村 |
【芽生】 濃情な皆川医学士は、お房のために和歌を一首作ったと言って、壁に懸けてある黒板の方を指して見せた。猶(なお)、埋葬の日を知らせよなどと言ってくれた。 |
若山牧水 |
【野蒜の花】 好かざりし梅の白きを好きそめぬわが二十五の春のさびしさ この一首が恐らく私にとつて梅の歌の出來た最初であつたらう。 |
若山牧水 |
【島三題】 君から借りて讀んだ萬葉集の、讀み馴れた歌から歌を一首二首と音讀しようとして聲が咽喉につかへて出ず、強ひて讀みあげようとするとそれは怪しい嗚咽(をえつ)の聲となつた。 |
若山牧水 |
【温泉宿の庭
】 翌日は半日あまりF--さんの部屋で遊びました。そして、眼前の景物を題に一首二首と詠むことになりました。F--さんにも面白いのが出來たのでしたが、惜しい事にはいま思ひ出せません。 |
芥川龍之介 |
【邪宗門
】 そこで泣く泣く御立ち帰りになって、その御文を開けて御覧になると、一首の古歌がちらし書きにしてあるだけで、一言もほかには御便りがございません。 |
森鷗外 |
【ぢいさんばあさん
】 伊織は目に涙を浮べて暫く答へずにゐたが、口を開いて一首の歌を誦した。 |
作者不詳 国民文庫 (明治44年) |
【義経記】 折節風はげしくて、岬へ船を寄せ兼ねて、二十八日の夕暮に安房国州の崎と言ふ所に御舟を馳せ上げて、其の夜は、滝口の大明神に通夜有りて、夜と共に祈誓をぞ申されけるに、明神の示し給ふぞと覚しくて、御宝殿の御戸を美しき御手にて押し開き、一首の歌をぞ遊ばしける。 |
作者不詳 国民文庫 (明治43年) 校訂: 古谷知新 |
【源平盛衰記】 月の出塩満けるに、そこはかともなく浪に流るゝもづくの中に、卒都婆一本見え来る。あやしや何なる事にかとて取上見之ば、二首の歌を書、下に康頼法師と書付たり。各手々に是を取渡し、歌を詠じて哀なる事也。 |