作 家
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作 品
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紫式部 與謝野晶子 訳 |
【源氏物語 梅が枝】 源氏は贈り物に、自身のために作られてあった直衣(のうし)一領と、手の触れない薫香(くんこう)二壺(ふたつぼ)を宮のお車へ載せさせた。 |
紫式部 與謝野晶子 訳 |
【源氏物語 総角紫式部】 薄紫の細長一領に、三重襲(かさね)の袴(はかま)を添えて纏頭(てんとう)に出したのを使いが固辞して受けぬために、物へ包んで供の人へ渡した。 |
芥川龍之介 |
【邪宗門】 女房たちの間には、忍び笑いの声が起りましたが、侍が続いて、 「みどりの糸をくりおきて夏へて秋は機織(はたお)りぞ啼く。」と、さわやかに詠じますと、たちまちそれは静まり返って、萩模様のある直垂(ひたたれ)を一領、格子の間から月の光の中へ、押し出して下さいました。 |
泉鏡花 |
【紅玉】 もとに立戻りて、また薄(すすき)の中より、このたびは一領の天幕(テント)を引出し、卓子(テェブル)を蔽(おお)うて建廻す。 |
佐々木味津三 |
【旗本退屈男 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男】 さればこそ、蓋を払うと同時に現れた胸前は、紫縒糸(よりいと)、総絹飾り房の目ざましき一領でした。 |
岡本綺堂 |
【箕輪(みのわ)心中】 彼は黙って起ちあがって、床の間の鎧櫃(よろいびつ)から一領の鎧を引き摺り出して来た。 |
田山花袋 |
【道綱の母】 七月になつてからであつた。ある日、使のものが古い衣と新しいのと一領づゝ物に包んで、急いでそれを仕立直すやうにとて持つて來た。 |
作者不詳 国民文庫 (明治43年) 校訂: 古谷知新 |
【源平盛衰記】 其上大名三十人に仰て、一人別の結構には、鞍置馬裸馬各一匹、長櫃一合、其中には宿物一領、小袖十領、直垂五具、絹十匹入べし、此外不可過分と被下知ければ、三十人面々に我おとらじと、馬は六鈴沛艾を撰び、鞍は金銀を鏤たりけれ共、下らざりければ、是も面々に本意なき事にぞ思ひ申ける。 |