作 家
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作 品
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徳田秋声 |
【新世帯】 支度(したく)はもとよりあろうはずはないけれど、それでもよかれ悪(あ)しかれ、箪笥(たんす)の一棹(さお)ぐらいは持って来るだろう。夜具も一組は持ち込むだろう。とにかく貰って見給え、同じ働くにも、どんなに張合いがあって面白いか。 |
徳田秋声 |
【仮装人物】 葉子は桑と塗物の二つか三つある中から、かなり上等な桑の鏡台を買ったが、そこの紹介で大通りの店で箪笥も一棹(ひとさお)買った。 |
徳田秋声 |
【あらくれ】 死んだ上(かみ)さんの衣裳(いしょう)が、そっくりそのまま二階の箪笥に二棹(ふたさお)もあると云うことも、姉には可羨(うらやま)しかった。 |
徳田秋声 |
【縮図】 二階は八畳と六畳で、総桐(そうぎり)の箪笥(たんす)が三棹(さお)も箝(は)め込みになっており、押入の鴨居(かもい)の上にも余地のないまでに袋戸棚(ふくろとだな)が設(しつら)われ、階下(した)の抱えたちの寝起きする狭苦しさとは打って変わって住み心地(ごこち)よく工夫されてあった。 |
長谷川時雨 |
【木魚の顔】 老嬢(おうるどみす)になった娘のミシン台とたんすが一棹(ひとさお)あるきりのわびしい暮しかただった。 |
近松秋江 |
【黒髪】 私はもう、それで、すっかり安心して嬉(うれ)しくなってしまい、座敷と座敷の境の閾(しきい)のところに立ったまま、そこらを見廻すと、八骨の右手の壁に沿うて高い重ね箪笥(たんす)を二棹(さお)も置き並べ、向うの左手の一間の床の間にはちょっとした軸を掛けて、風炉釜(ふろがま)などを置いている。 |
島崎藤村 |
【夜明け前 第一部 下】 京都から引き揚げる将軍家用の長持が五十棹(さお)も木曾街道を下って来るころは、この宿場では一層荷送りの困難におちいった。六月十日に着いた将軍の御召馬は、言わば西から続々殺到して来る関東方の先触(さきぶ)れに過ぎなかった。半蔵は栄吉と相談し、年寄役とも相談の上で、おりから江戸屋敷へ帰東の途にある仙台の家老(片倉小十郎(かたくらこじゅうろう))が荷物なぞは一時留め置くことに願い、三棹の長持と五駄(だ)の馬荷とを宿方に預かった。 |