作 家
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作 品
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徳冨健次郎 |
【みみずのたはこと】 畑の物は可なり出来る。昨年は陸穂(おかぼ)の餅米が一俵程出来たので、自家で餅を舂いた。今年は大麦三俵籾(もみ)で六円なにがしに売った。田園生活をはじめてこゝに六年、自家の作物が金になったのは、此れが皮切だ。 |
小島烏水 |
【天竜川】 乗客一同は又迎へられて、船中の人となつた、榎の渡しを横に見て、川田(かはだ)温田(ぬくだ)の二村のあるところで、乗客は大体どつちかの村へ下りた、饂飩五函、塩一俵が岸に揚がつた、村近くなつて、峡流(カニヨン)も静かになり、米を舂く水車船も、どうやら呑気らしい、 |
太宰治 |
【魚服記】 スワは空の青くはれた日だとその留守に蕈(きのこ)をさがしに出かけるのである。父親のこさえる炭は一俵で五六銭も儲(もう)けがあればいい方だったし、とてもそれだけではくらせないから、父親はスワに蕈を取らせて村へ持って行くことにしていた。 |
宮沢賢治 |
【毒もみのすきな署長さん】 「あっ、そうだ。あのね、署長さんがね、僕のうちから、灰を二俵買ったよ。僕、持って行ったんだ。ね、そら、山椒の粉へまぜるのだろう。」 「そうだ。そうだ。きっとそうだ。」みんなは手を叩(たた)いたり、こぶしを握(にぎ)ったりしました。 床屋(とこや)のリチキは、商売がはやらないで、ひまなもんですから、あとでこの話をきいて、すぐ勘定(かんじょう)しました。 毒もみ収支計算 費用の部 一、金 二両 山椒皮 一俵 一、金 三十銭(メース) 灰 一俵 計 二両三十銭也(なり) 収入の部 一、金 十三両 鰻(うなぎ) 十三斤(きん) 一、金 十両 その他見積り 計 二十三両也 差引勘定 二十両七十銭 署長利益 |