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遠慮深謀 えんりょしんぼう ⇒ 深謀遠慮 ⇒ 遠慮深謀 |
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作家
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作品
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梅崎春生 |
【狂い凧】
一時ほどは旦那風を吹かせなくなったが、幸太郎は彼の家にとって、やはり本家の旦那であった。双生児が生れた時も、喜んだのはむしろ幸太郎で、彼が生れた土地の城の名を栄城と言い、それを割って二人に命名したことでも判る。つまり彼は二人の名付親に当るのだ。しかし、その時、「栄介城介の二人の中、勉強の出来る方の子の学資を出してやろう。そのかわりに自分に子供が出来なかったら、その子をわしの養子に呉れ」 と後年、福次郎に申し出るほどの遠慮深謀はなかっただろう。幸太郎もまだ若かったし、それを予想出来ない筈だから。 栄介は今もぼんやりと憶い出す。親しい兄弟なので、訪問するには庭先に廻ればいいのに、かならず玄関の扉をがらがらあけて入ってくる。彼は案内を乞うことをしない。そのままずかずかと上って、玄関に続く座敷にぴたりと坐ってしまう。 |
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