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凡俗非議
ぼんぞくひぎ
作家
作品

有島武郎

【惜みなく愛は奪う】

そこに何等かの執着をつなぎ、葛藤を加えるのは、要するに下根粗笨そほんな外面的見断に支配されての迷妄に過ぎない。それらの境を静かに超越して、嬰児の戯れを見る老翁のようにすべての努力と蹉跌さてつとの上に、淋しい微笑を送ろうとする。そこには冷やかな、然し皮相でない上品さが漂っている。或は又凡てをれ凡てを抱いて、飽くまで外界の跳梁ちょうりょうに身を任かす。昼には歓楽、夜には遊興、身を凡俗非議の外に置いて、死にまでそのほしいままな姿を変えない人もある。そこには皮肉な、然し熱烈な聡明がうかがわれないではない。私はどうしてそれらの人を弾劾だんがいすることが出来よう。

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Last updated : 2024/06/28