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飽衣美食
ほういびしょく |
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作家
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作品
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岡本かの子 |
【慈悲】
それにもかかわらず、主人は自分が慈悲を行って居ることに満足を感じて居たでしょう。自分の「志」を立てることばかり考えて居た主人は、それがために相手が、どんな不自由や迷惑を感じて居るかに気がつかなかったのです。つまり自己満足、利己主義の慈悲とはこういうことなのです。有がた迷惑の好意についても一つ云えば、某外国に一百六十歳近い長寿者がありました。皇室ではそれをよみせられ、召し上げられて飽衣美食でもてなしました。長寿者はたちまち死にました。粗食故に長寿して居た生命が、美食に遇ってたちまち破損して仕舞ったのだそうです。 要するに本当の慈悲とは、相手の立場や本質を考え、自分の慈善的感情本位でない施行(ほどこし)に於いて本然の達成が遂げられるのです。 |
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