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二股膏薬
ふたまたごうやく
ふたまたこうやく
内股に貼った膏薬が右の脚に付いたり左に付いたりするように、態度が一定せず、しっかりした意見や主張もなく、都合しだいで、あちらこちらと付き従うこと。また、そういう人のこと。「内股膏薬うちまたごうやく」「股座膏薬またぐらごうやく」とも。
⇒ 二股膏薬 ⇒ 内股膏薬
作家
作品

ドストエーフスキイ
中山省三郎訳

【 カラマゾフの兄弟 上】

「どんな犯罪なの? 人殺しって誰のことだい?」アリョーシャは釘づけにされたように棒立ちになった。ラキーチンも立ち止まった。
「どんなって? いやに白ばくれるね? 君がもうこのことを考えてるってこたあ、かけをしてもいいよ。しかし、こいつぁあちょっとおもしろい問題だ。ねえアリョーシャ、君はいつも二股膏薬ふたまたごうやくだけれど、とにかく本当のことを言うから、聞いてみるんだが、いったい君はこのことを考えてたのか、それとも考えていなかったのかい?」

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宮本百合子

【獄中への手紙 一九四三年(昭和十八年)】

 バルザックを読んで、いろいろ考えます。そして本当のフランス文学史は少くともまだ日本文ではないと思いました。「現代史の裏面」これにはディケンズがフランスに与えた影響について考えさせます。今よんでいる「暗黒事件」は、ナポレオン時代というものの混沌さ、あの時代からあとに出来た所謂貴族のいかがわしさが、おそろしく描かれています。フランスが、亡命貴族の土地財産をこっそり或は大ぴらに買い取った二股膏薬どもを貴族として持っているからこそ、あの一方から考えると奇妙でさえある伝統の尊重、本当の貴族への評価があって、しかも貴族はいつも競売にさらされているようなわけだと分りました。

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吉川英治

【三国志 群星の巻】

「どうして将軍は、そんなことをもうご存じなのか。まあ、待ち給え」と、なだめた。
 呂布は、なお怒って、
「今、わが邸へ、董太師が美女をのせて、相府へ帰られたと、告げて来た者があるのだ。そんなことが知れずにいると思うのか。この二股膏薬ふたまたこうやくめ。八ツ裂きにしてくれるから覚えておれよ」
 と、従う武士にいいつけて、はや引ったてようとした。

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吉川英治

【三国志 臣道の巻】

「臣、愚考いたしますに、あなたの御子のうち、お一方様を、朝廷の仕官にさし出して、都へ人質として留めおかれたら、曹操も疑うことなく、従って将来、ご家運のほどもいよいよ長久と存じられますが」と、述べた。
 気に入らないとみえて、劉表は彼の話なかばから横を向いていたが、突然、
「二心をいだく 双股膏薬ふたまたこうやくめ。――韓嵩を縛して斬り捨てい!」と、あたりの武士へ命じた。
 武士たちは剣に手をかけながらさっと韓嵩のうしろに立った。韓嵩は手を振って叩頭こうとう百遍しながら、
「――ですから臣がお使いをうける前に、再三申しあげたではございませんか。わたくしは私の信じることを申しあげるのが、最善の臣道と心得、またお家の為と思っておすすめしたに過ぎません。お用いあるとないとは、あなたのお考え次第のことです」と、陳弁これ努めた。<

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Last updated : 2024/06/28