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無常迅速
むじょうじんそく |
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作家
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作品
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夏目漱石 |
【吾輩は猫である】
ちょうどその晩は少し曇って、から風が |
芥川龍之介 |
【偸盗】
そのうちに、盗人が二人三人、「 「無常迅速。」 「生き顔より、死に顔のほうがよいようじゃな。」 「どうやら、前よりも真人間らしい顔になった。」 猪熊の爺の死骸は、 |
幸田露伴 |
【二日物語】
是や見し |
蒲原有明 |
【夢は呼び交す ――黙子覚書――】
夢から醒めた鶴見には、 |
高村光太郎 |
【美の日本的源泉】
背後に |
島崎藤村 |
【芭蕉】
幻住庵は菅沼曲水の伯父にあたる幻住老人といふ僧の住んだ草庵で、そこに芭蕉はしばらく住んだといふことが、あの記文の中に書いてある。さういふ歴史は兎に角、私はあの幻住庵を芭蕉の生活の奧の方に光つて見える一つの象徴として想像したい。あの草庵を芭蕉の『生命の宮殿』とも想像したい。無常迅速の境地に身を置きながら永遠といふものに對して居るやうな詩人をあの草庵の中に置いて想像したい。
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寺田寅彦 |
【連句雑俎】
しかし大陸と大洋との気象活動中心の境界線にまたがる日本では、どうかすると一日の中に夏と冬とがひっくり返るようなことさえある。その上に大地震があり大火事がある。無常迅速は実にわが国の風土の特徴であるように私には思われる。日本人の宗教や哲学の奥底には必ずこの自然的制約が深い根を張っている。そうして俳諧の華実もまた実にここから生まれて来るような気がする。無常迅速、流転してやまざる環境に支配された人生の不定感は一方では外来の仏教思想に豊かな |
幸徳秋水 |
【死刑の前】
無常迅速・生死事大、と仏家はしきりにおどしている。生は、ときとしては大いなる幸福ともなり、またときとしては大なる苦痛ともなるので、いかにも事大にちがいない。しかし、死がなんの事大であろう。人間の血肉の新陳代謝がまったくやすんで、形体・組織が分解しさるのみではないか。死の事大ということは、太古より知恵ある人がたてた一種のカカシである。地獄・極楽の蓑笠つけて、愛着・妄執の弓矢をはなさぬ姿は、はなはだものものしげである。漫然と遠くからこれをのぞめば、まことに意味ありげであるが、近づいて仔細にこれを見れば、なんでもないのである。
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横光利一 |
【夜の靴 ――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)】
「そう、宿直手当もあるんだよ。月給だけだと三十五円だけど。」私は自分がある大学の教師をしていたとき、月給四十二円を貰った最初の日の貴重な瞬間のことを思い出した。あのときは、月給というものは金銭ではないと思ったが、長男の月給はなおさらだ。 「一回月給を貰って、忽ち馘とは、これはまた無常迅速なものだね。しかし、おれのときよりお前の方が多いから、豪いもんだ。」 私は嬉しくなったので妻に参右衛門の仏壇へ状袋を上げてくれと頼んだ。 |
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