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無理算段
むりさんだん
作家
作品

夏目漱石

【現代日本の開化 ――明治四十四年八月和歌山において述――】

本が読みたければ差支ない以上本ばかり読もうとする。あるいは学問がすきだと云って、親の心も知らないで、書斎へ入って青くなっている子息むすこがある。はたから見れば何の事か分らない。親父が無理算段の学資を 工面くめんして卒業の上は月給でも取らせて早く隠居でもしたいと思っているのに、子供の方では活計くらしの方なんかまるで無頓着むとんじゃくで、ただ天地の真理を発見したいなどと太平楽を並べて机にもたれてにがり切っているのもある。

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有島武郎

【惜みなく愛は奪う】

 お前の実生活にもその影響がない訳ではない。これからのお前は必然によって動いて、無理算段をして動くことはない。お前の個性が生長して今までのお前を打ち破って、更に新しいお前を造り出すまで、お前は外界の圧迫に余儀なくされて、無理算段をしてまでもお前が動く必然を見なくなる。例えばお前が外界に即した生活を営んでいた時、お前は控え目という道徳を実行していたろう。お前は心にもなく善行をし過すことを恐れて、控目に善行をしていたろう。然しお前は自分の欠点を隠すことに おいては、中々控目には隠していなかった。むしろ恐ろしい大胆さを以て、お前の心の醜い秘密を人に知られまいとしたではないか。お前は人の前では、ひそかに自任しているよりも、低く自分の徳を披露ひろうして、控目という徳性を満足させておきながら、欲念というような実際の弱点は、一寸見ちょっとみには見つからない程、綿密に上手に隠しおおせていたではないか。そういう態度を私は無理算段と呼ぶのだ。然し私に即した生活にあっては、そんな無理算段はいらないことだ。いかなる欲念も、 畢竟ひっきょうお前の個性の生長のかてとなるのであるが故に、お前はそれに対して臆病であるべき必要がなくなるだろう。即ち、お前は、私の生長の必然性のためにのみ変化して、外界に対しての顧慮から伸び縮みする必要は絶対になくなるべきはずだ。何事もそれからのことだ。

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太宰治

【清貧譚】

 むかし江戸、向島あたりに馬山まやま才之助といふ、つまらない名前の男が住んでゐた。ひどく貧乏である。三十二歳、独身である。菊の花が好きであつた。佳い菊の苗が、どこかに在ると聞けば、どのやうな無理算段をしても、必ず之を買ひ求めた。千里をはばからず、と記されてあるから相当のものである事がわかる。

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織田作之助

【雪の夜】

 それでも、せがまれるままに随分ものも買ってやった。なお二百円の金を無理算段して、神経痛だという瞳を温泉へ連れて行った。十日経って大阪へ帰った。瞳を勝山通のアパートまで送って行き、アパートの入口でお帰りと言われて、すごすご帰る道すうどんをたべ、殆んど一文無しになって、下味原の家まで歩いて帰った。二人の雇人は薄暗い電燈の下で、浮かぬ顔をして公設市場の広告チラシの活字を拾っていた。赤玉から遠のこうと、なんとなく決心した。

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坂口安吾

【中庸】

「しかしだね。予算のないのは分るが、なんとか無理算段して学校の床を張ってやることはできまいか」
 余が重ねてかく云うと、彼はまたしてもにわかに険悪な色を目にためて、
「そうですか。おやり下さい。村長。遠慮なく。御気のすむようになさいましよ。村長」

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豊島与志雄

【好意】

 河野が八百円の金を無理算段して、吉岡の所へ返しに来たのは、何も、吉岡の死期が迫ってると信じて、今のうちに返済しておかなければ………とそういうつもりではないらしかった。河野の細君にはそういう気持が多少働いてたかも知れないが、河野自身には少しもそんなことはなかったらしい。後で河野は私へ向って云った。 「八百円の金を拵えるのに貧乏な僕は、ひどい無理算段をしたには違いない。

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岸田國士

【空の赤きを見て】

美代  それなら、なほ、お父さんの我儘な望みを思ひ止まらせるやうになさらなければなりませんわ。あたしたち兄妹の手で、最後まで看護をしたいといふ意志を、はつきりおつしやるべきですわ。先祖の墓のそばで死にたいといふお望みは、一応もつとものやうですけれど、一番たよりになる筈の子供たちのそばをはなれて、それもこんなに無理算段をさせてまで、動けないからだをひきずつていらつしやる必要がどこにあるでせう。物の道理から云つてもさうですわ。

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羽志主水

【越後獅子】

「何しろ十月許りで、もう店賃たなちんは三つも溜めちまう。震災後、無理算段で建てた長屋は焼かれる、類焼者には、敷金を一時に返さにゃならず。夫に火災保険が、先々月で切れて居たのです」
 と足袋屋の主人、ベソをかいて零した。

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泉鏡花

【薄紅梅】

 その女が、これも化けた一つので、くるままでこしらえて、無事に帰してくれたんです。が、こちらが身震みぶるいをするにつけて、立替たてかえの催促がはげしく来ます。金子かね為替かわせ無理算段で返しましたが、はじめての客に帰りの俥まで 達引たてひいた以上、情夫まぶ――情夫(苦い顔して)が一度きりいたちの道では、帳場はじめ、朋輩へ顔が立たぬ、今日来い、明日来い、それこそ日ぶみ、矢ぶみで。――もうこの頃では、押掛ける、引摺りに行く、連れて帰る、と決闘状はたしじょう

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夢野久作

【近世快人伝】

 それでも、まだ印形や金を借りに来るものがある。しかも以前に、二度と来られないようなインチキで翁を引っかけて行った人間が、シャアシャアと又遣って来るのである。それでも翁は何も云わずに無理算段をした金を遣り、印形を貸す。翁の一家は、そのために、七十五万円の富豪から一躍、 明日あすの米も無い窮迫に陥ってしまったが、それでも避難民張りの米喰虫は雲集するばかり……。

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  • それぞれの四字熟語の詳しい意味などは、辞典や専門書でお確かめください。
  • このサイトの制作時点では、三省堂の『新明解 四字熟語辞典』が、前版の5,600語を凌ぐ6,500語を収録し、出版社によれば『類書中最大。よく使われる四字熟語は区別して掲示。簡潔な「意味」、詳しい「補説」「故事」で、意味と用法を明解に解説。豊富に収録した著名作家の「用例」で、生きた使い方を体感。「類義語」「対義語」を多数掲示して、広がりと奥行きを実感』などとしています。

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Last updated : 2024/06/28