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温順篤実
おんじゅんとくじつ
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作家
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作品
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【大塩平八郎】
四人は翌二十日に河内の界に入つて、食を求める外には人家に立ち寄らぬやうに心掛け、平野川に沿うて、間道を東へ急いだ。さて途中どこで夜を明かさうかと思つてゐるうち、夜なかから大風雨になつた。やう/\産土の社を見付けて駈け込んでゐると、暫く物を案じてゐた渡辺が、突然もう此先きは歩けさうにないから、先生の手足纏にならぬやうにすると云つて、手早く脇差を抜いて腹に突き立てた。左の脇腹に三寸余り切先が這入つたので、所詮助からぬと見極めて、平八郎が介錯した。渡辺は色の白い、少し歯の出た、温順篤実な男で、年齢は
僅に四十を越したばかりであつた。
二十一日の暁になつても、大風雨は止みさうな気色もない。平八郎父子と瀬田とは、渡辺の死骸を跡に残して、産土の社を出た。土地の百姓が死骸を見出して訴へたのは、二十二日の事であつた。社のあつた所は河内国志紀郡田井中村である。
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Last updated : 2024/06/28