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温厚篤実
おんこうとくじつ
作家
作品

石川啄木

【雲は天才である】

人が、自己の信用の範囲に於て、或る一人を、他の未知の一人に握手せしむる際の、謂はば、神前の祭壇に読み上ぐべき或る神聖なる儀式の告文、と云った様な紹介状ではないか。若し斯くの如き紹介状を享くる人が、温厚篤実にして よろず 中庸を尚ぶ世上の士君子、例えば我が校長田島氏の如きであったら、恐らく見もせぬうちから玄関に立つ人を前門の虎と心得て、いざ狼の立塞がぬ間にと、草履片足で裏門から逃げ出さぬとも限らない。

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岸田國士

【文化勲章に就て】

劇評家のエドモン・セエがもう勲三等で十数年前は未だぴいぴいの新進だったと記憶する。これはなるほど出世の早そうな温厚篤実な劇評家であったと私はちよっと愉快であった。

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萩原朔太郎

【郷愁の詩人 与謝蕪村】

に耐えよと窓を暗くす竹の雪

 世に入れられなかった蕪村。卑俗低調の下司げす趣味が流行して、詩魂のない末流俳句が歓迎された天明てんめい時代に、独り芭蕉の精神をして孤独に世から超越した蕪村は、常に鬱勃うつぼつたる不満と寂寥せきりょうに耐えないものがあったろう。「愚に耐えよ」という言葉は、自嘲じちょうでなくして憤怒ふんぬであり、悲痛なセンチメントの調しらべを帯びてる。蕪村は極めて温厚篤実の人であった。しかもその人にしてこの句あり。時流に超越した人の不遇思うべしである。

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寺田寅彦

【自由画稿】

 正月元旦がんたんというときっときげんが悪くなってにがい顔をして家族一同にも暗い思いをさせる老人があった。それは温厚篤実をもって聞こえた人で世間ではだれ一人非難するもののないほどまじめな親切な老人であって、そうして朝晩に一度ずつ 神棚かみだなの前に礼拝し、はるかに皇城の空を伏しおがまないと気の済まない人であった。

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三好十郎

【廃墟(一幕)】

僕は冗談を言ってるんじゃない、まじめです。あなたは一二年前迄は、温厚篤実な立派な学者で、学生達からは人望が有って――それがこんなふうになってと――いまだに温厚篤実な学者かあ。

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国枝史郎

【二人町奴】

さてところでその長兵衛、どのような人物かと申しますに、素性は武士、武術の達人、心は豪放濶達ながら、一面温厚篤実の長者、しかも侠気は満腹に允ち生死はつとに天に任せ悠々自適の所もあり、子分を愛する人情は、母の如くに優しくもあれば、父の如くに厳しくもあり、洵に緩急よろしきを得、財を惜しまずよく散じ、極めて清廉でございました。

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  • それぞれの四字熟語の詳しい意味などは、辞典や専門書でお確かめください。
  • このサイトの制作時点では、三省堂の『新明解 四字熟語辞典』が、前版の5,600語を凌ぐ6,500語を収録し、出版社によれば『類書中最大。よく使われる四字熟語は区別して掲示。簡潔な「意味」、詳しい「補説」「故事」で、意味と用法を明解に解説。豊富に収録した著名作家の「用例」で、生きた使い方を体感。「類義語」「対義語」を多数掲示して、広がりと奥行きを実感』などとしています。

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Last updated : 2024/06/28