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大風呂敷
おおぶろしき
作家
作品

夏目漱石

【道草】

気の毒な事に健三はこうした細君の批評を超越する事が出来なかった。そういわれるたび気不味きまずい顔をした。ある時は自分を理解しない細君をしんから忌々いまいましく思った。ある時はしかり付けた。またある時は頭ごなしにり込めた。すると彼の癇癪かんしゃくが細君の耳に空威張からいばりをする人の言葉のように響いた。細君は「手前味噌」の四字を「 大風呂敷おおぶろしき」の四字に訂正するに過ぎなかった。

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芥川龍之介

【芭蕉雑記】

秋ふかき隣は何をする人ぞ
 こう云う荘重の「調べ」を とら え得たものは茫々たる三百年間にたった芭蕉一人である。芭蕉は子弟を おし えるのに「俳諧は万葉集の心なり」と云った。この言葉は少しも大風呂敷ではない。芭蕉の俳諧を愛する人の耳の穴をあけねばならぬ 所以 ゆえん である。

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田山花袋

【重右衛門の最後】

そして、少しでも厭な素振を見せると、それなら考があるから呉れなくても好いと威嚇おどすのが ならい 。村方では又火でも けられては……と思うから、仕方なしに、言うまゝに呉れて遣る。すると 好気いゝき に為って、 はゞで、大風呂敷 たずさ えて貰って歩くという始末。殆ど村でも持余した。

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永井荷風

【矢はずぐさ】

新聞屋の種取たねとりにと尋来たずねきた るに逢いてもその身丈夫にて人の顔さへ見れば 臆面おくめんなく 大風呂敷 おおぶろしきひろぐる勇気あらば願うてもなき自慢話の相手たるべきに、しからざる身には唯々うるさくつらきものとなるなり。

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島崎藤村

【破戒】

回向 えこう するような持主の目は種牛から離れなかった。種牛は 最早もう 足さえも切離された。牧場の草踏散らした 双叉ふたまたつめも、今は小屋から土間の方へ投出 ほうりだ された。灰紫色の膜におお われた臓腑は、丁度斯う大風呂敷の包のように、べろ/\した まゝ で其処に置いてある。三人の屠手は互に庖丁を入れて、骨に添うて肉を切開くのであった。

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二葉亭四迷

【浮雲】

夏の初より頼まれてお勢に英語を教授するように成ッてから、文三もすこしく打解け出して、折節は日本婦人の有様、束髪の利害、さては男女交際の得失などを論ずるように成ると、不思議や今まで文三を男臭いとも思わず太平楽を並べ大風呂敷ひろげていたお勢が、文三の前では何時からともなく口数を聞かなく成ッて、何処ともなく落着て、優しく女性にょしょうらしく成ッたように見えた。

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  • それぞれの四字熟語の詳しい意味などは、辞典や専門書でお確かめください。
  • このサイトの制作時点では、三省堂の『新明解 四字熟語辞典』が、前版の5,600語を凌ぐ6,500語を収録し、出版社によれば『類書中最大。よく使われる四字熟語は区別して掲示。簡潔な「意味」、詳しい「補説」「故事」で、意味と用法を明解に解説。豊富に収録した著名作家の「用例」で、生きた使い方を体感。「類義語」「対義語」を多数掲示して、広がりと奥行きを実感』などとしています。

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Last updated : 2024/06/28