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左顧右眄
さこうべん |
作家
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作品
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【空車】
馬の口を取っている男は背の直い大男である。それが肥えた馬、大きい車の霊ででもあるように、大股に行く。この男は左顧右眄することをなさない。物にあって一歩をゆるくすることもなさず、一歩を急にすることをもなさない。旁若無人という語はこの男のために作られたかと疑われる。
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【雁】
そしてその頭の中には、極めて楽観的な写象が往来している。一体女は何事によらず決心するまでには気の毒な程迷って、とつおいつする癖に、既に決心したとなると、男のように左顧右眄しないで、
illres を装われた馬のように、向うばかり見て猛進するものである。
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【青年】
今から溯って考えて見れば、ゆうべは頭が鈍くなっていたので、左顧右眄することが少く、種々な思慮に掣肘せられずに、却って早くあんな決心に到着したかとも推せられるのである。
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【文芸的な、余りに文芸的な】
僕は或は谷崎氏の言ふやうに左顧右眄してゐるかも知れない。いや、恐らくはしてゐるであらう。僕は如何なる悪縁か、驀地に突進する勇気を欠いてゐる。しかも稀にこの勇気を得れば、大抵何ごとにも失敗してゐる。
或友人は森先生の詩歌に不満を洩らした僕の文章を読み、僕は感情的に森先生に刻薄であると云ふ非難を下した。僕は少くとも意識的には森先生に敵意などは持つてゐない。いや、寧ろ森先生に心服してゐる一人であらう。しかし僕の森先生にも羨望を感じてゐることは確かである。森先生は馬車馬のやうに正面だけ見てゐた作家ではない。しかも意力そのもののやうに一度も左顧右眄したことはなかつた。「タイイス」の中のパフヌシユは神に祈らずに人の子だつたナザレの基督に祈つてゐる。僕のいつも森先生に近づき難い心もちを持つてゐるのは或はかう云ふパフヌシユに近い歎息を感じてゐる為であらう。
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【斗南先生】
このような批判を心の中に繰返しながら、三造は、こう考えている自分自身の物の見方が、あまりに生温い古臭いものであることに思い及ばないわけには行かなかった。伯父の一つの道への盲信を憐れむ(あるいは羨む)ことは、同時に自らの左顧右眄的な生き方を表白することになるではないか。して見れば彼自らも、伯父と同様、新しい時代精神の予感だけはもちながら、結局、古い時代思潮から一歩も出られない滑稽な存在となるのでないか。
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【巴里のむす子へ】
私たちの一家は、親子三人芸術に関係している。都合のいいこともあれば都合の悪いこともある。しかし今更このことを喜憂しても始まらない。本能的なものが運命をそう招いたと思うより仕方がない。だが、すでにこの道に入った以上、左顧右眄すべきではない。殉ずることこそ、発見の手段である。親も子もやるところまでやりましょう。芸術の道は、入るほど深く、また、ますます難かしい。
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【概念と心其もの】
丁度胎内の盲腸のように平常はまるで自覚を伴わない、どうでもよいように、考えてなければ有るか無いかも知らずに過ごすようなものかも知れない。けれども、いざと云う時に、命を危くする丈のものではある。人として、自分の生活内容をあらゆる方面に伸展させて行こうとする願望と一緒に、同じ心の中から、この歩幅を縮めさせ、左顧右眄させて、終に或る処まで、見越をつけさせて仕舞うような何かの動機があるのである。
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【三作家に就ての感想】
私も氏の作品に強く心を惹かれ乍らも、どこかにまだ心持にぴつたり來ない點がないではありません。その隙間は氏が熱情的な理想家のやうに見え乍ら、その底に於ては理智が働
き過ぎるといふ
結果から、周圍に對してどうしても左顧右眄せずには居られないといふところがあるかも知れません。從つてその思想や人生觀の凡てを愛を以て裏づけて行かうとする氏の作家としての今後は、どんな轉換を見せて行くかも知れませんが、その理智の人としての弱點から釀されて來る何物かは、可成り氏の行手にいろ/\な曲折を出すだらうと思はれます。
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【異邦人の意欲】
民衆の生活は、緩慢で鈍感である。強力であって、左顧右眄をしない。牛の如きものである。殊にその生活が現代のように貧窮し逼迫してくると、当面の必要事以外に目を向けたがらない。公衆は騒ぎ立てるが、民衆は默って当面の問題を見つめている。
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Last updated : 2024/06/28