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即心即仏
そくしんそくぶつ
作家
作品

坂口安吾

【閑山】

「拙僧は左様な法力を会得した生きぼとけではござ らぬ」と和尚は答えた。「見られる通り俗世間を遁れ、一念解脱を発起した鈍根の青道心で厶る。死生を大悟し、即心即仏非心非仏に到らんことを欲しながら、妄想尽きず、見透するところ甚だ浅薄な、一尿床の鬼子(寝小便垂れ小僧)とは即ちこの坊主がこと。加持祈祷は思いもより申さぬ」と受けつける気配もなかった。

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木下杢太郎

【南蛮寺門前】

伊留満喜三郎 でいゆすこそは天地の唯一神ゆゐいつしん。誰も造りしものはおぢやらぬ。
乗円 は、は、でいゆすを造りしものが無うて、でいゆすく天地万象を造りしとな。然らばでいゆすは即ち五塵ごぢんくわい五蘊ごうんの泉、憎愛簡択ぞうあいかんたくの源とこそ見ゆれ。
伊留満喜三郎 然らば問はむ。如何なるか是れ仏法。
乗円  即心即仏そくしんそくぶつ
伊留満喜三郎 如何なるか是れ即心即仏
乗円 即心即仏
伊留満忽ち隠し持ちたる短刀を抜いて、乗円が胸に閃かす。
伊留満喜三郎 如何なるか是れぶつ
乗円 (平然として)法性は之れ無知亦無得むちやくむとく無色亦無受相行識むしきやくむじゆさうぎやうしき
うかれ男 (つと進み伊留満の手を押へて)宗論に刃物三昧は卑怯なるぞ。

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種田山頭火

【行乞記 (一)】

岩に波が、波が岩にもつれている、それをじっと観ていると、岩と波とが闘っているようにもあるし、また、戯れているようにもある、しかしそれは人間がそう観るので、岩は無心、波も無心、非心非仏、即心即仏である。

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神西清

【雪の宿り】

あの勧修念仏記かんじゅねんぶつきを著したのはその年の秋のことである。そこへ今度の大乱である。貞阿はそんな話をして、ついでに一慶和尚の自若たる大往生だいおうじょうぶりを披露した。示寂の前夜、侍僧に紙を求めて、筆を持ち添えさせながら、「即心即仏、非心非仏、不渉一途、阿弥陀仏」と 大書たいしょしたと云うのである。玄浴主は、いかさま禅浄一如の至極境、と合槌あいづちを打つ。

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三遊亭圓朝 鈴木行三校訂・編纂

【菊模様皿山奇談】

此のを知らずして破戒無慚むざん邪見じゃけん放逸ほういつの者を人中じんちゅうの鬼畜といって、鬼の畜生という事じゃ、それ故に大梅和尚たいばいおしょう馬祖大師ばそだいしに問うて如何いかなるかれ仏、馬祖答えて即心即仏という、大梅が其の 言下ごんか大悟だいごしたという、其の時に悟ったじゃ、此の世は実に仮のものじゃ、只四縁しえんの和合しておるのだ、

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Last updated : 2024/06/28